機関誌「はねだ」連載

「民間航空界の動き」より

 

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このページは羽田団の機関誌「はねだ」に平成16年第33号から連載されている

「民間航空界の動き」を改めて団員の皆さんに紹介します。  

目 次

号数

執筆者

発行日
 第47号 顧問:久保俊郎平成23年 6月 1日発行
 第46号 顧問:久保俊郎平成22年12月 1日発行
 第45号 顧問:久保俊郎平成22年 6月 1日発行
 第44号 顧問:久保俊郎平成21年12月 1日発行
 第43号 顧問:久保俊郎平成21年 6月 1日発行
 第42号 顧問:久保俊郎平成20年12月 1日発行
 第41号 顧問:久保俊郎平成20年 6月 1日発行
 第40号 顧問:久保俊郎平成19年12月 1日発行
 第39号編集部平成19年 6月 1日発行
 第38号編集部平成18年12月 1日発行
 第37号編集部平成18年 6月 1日発行
 第36号編集部平成17年12月 1日発行
 第35号 顧問:久保俊郎平成17年 6月 1日発行
 第34号 顧問:久保俊郎平成16年12月 1日発行
 第33号 顧問:久保俊郎平成16年 6月 1日発行

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第47号 平成23年6月1日発行

「民間航空界の動き」

顧問:久保俊郎

 

1. 国の予算削減を目指す事業仕分けの一環で、民主党の一部から、「中央省庁職員の海外出張に、格安航空(LCC)の航空券を購入すべきだJとの主張が出た。これに対し官僚側から反対意見が出た。これは日程が変わりやすい海外出張に、予約変更が出来ないLCCは逆に割高なキャンセル料を支払う為だ。LCCの活用に慎重な理由について国際交渉を担当する経済官庁は、スケヂュールの変更の難しさとともに「着陸料の安い空港を使用すると、不便な点が多い」と指摘する。目先のコスト削減のみを考える以前に、航空の場合は「如何に安全な出張を図るか」が先決であると思う。(22年12月1日)
2. いよいよ格安航空(LCC)の第一便が羽田にやって来る。マレーシアのエア・アジアXが9日、羽田−クアラルンプール線で週3便の運航を始める。 国内線各空港のLCC運行状況は右表の通りであるが、このエア・アジアの羽田便のキャンペーン価格は片道5千円とPR効果は絶大である。言うまでもなくLCCの特徴は、人件費の節約で、機内清掃はキャビンアテンダントが行い、到着地の停留時間をできるだけ短くするほか、飲食代は有料、機種は中型ジェットに統一し、部品その他整備を単純、短時間化することである。さらに機長は既に引退したものをあて、その給料を3分の1にするという。 混雑空港である羽田では、徹底したコストダウン、空港使用料の低廉化はむずかしく、今後の状況は予断を許さないものと思われる。 (12月 9日)
3. 観光庁は、旅行客の利便性向上のため、来年中にもパソコンからインターネットに接続する際の料金を無料化する。空港では羽田、成田、関西、中部など7カ所、韓国中国からの観光客が多い博多、下関、大阪港など全国100カ所の観光案内所でも、公衆無線LANサービスを無料で使えるようにする。 アジアのハブ空港とされるシンガポールのチャンギー空港や韓国の仁川空港などは既に空港ロビーなどでのネット接続を無料化している。(12月22日)
4. 12月24日発表された政府の来年度予算案で 1)羽田空港の整備費として131億円を計上した。大型機が就航できるように、C滑走路を3000メートルから3360メートルに延ばす。これによって2013年度には発着回数を現在の30万回から44万7千回に増やす。 2)成田空港でも14年度中に、22万回から30万回に増やす。このため2本の滑走路を効率よく使うため、 2億円を投じて滑走路に監視装置を設置する。(12月25日)
5. 我国で、国産旅客機YS-11の製造から40年ぶりで、三菱重工業が中距離用ジェット機を開発する。以下3点について学んでみよう。
 1)リージョナルジェットとは、地方を結ぶジェット旅客機のこと。一般的にはジェットエンジンで飛ぶ100人乗りまでの小型旅客機を指す。大都市の大きな空港と地方空港を結ぶ路線や、地方空港同志をつなぐことを想定している。羽田や成田からソウル(韓国)や台北に向かう近距離の国際線に飛ばすこともできる。
 2)航空機産業とは、飛行機やヘリコプターをつくっている産業。国内の売上高は約1兆円。自動車産業の48兆円、鉄鋼業の21兆円に比べると小さいが、航空機は自動車の100倍の3万点の部品からできているといわれ、いろいろな企業が航空機産業に加わることができる。政府や自治体が、企業の航空機産業への参入を後押しし始めた。
 3)炭素繊維複合材とは、石油や石炭をもとにつくった新素材。軽く、強度が高く重さは鉄の4分の1、強さは約10倍。航空機の機体材料は、アルミニュームが主流だっただが、最新機種ではこれが主役となりつつある。 機体を軽く、燃料を節約できるので、東レなどの製品が世界市場の7 割以上を占める。(12月25日)
6. 成田空港会社は格安航空会社(LCC)の進出に対し、50億円をかけて専用ターミナルビルの建設を予定していた。しかしこれらの航空会社の想定以上の低料金の要求や、日本航空の路線撤退で、ターミナルビルに空きが出たことで採算上建設を見送ることとした。 一方全日空は1月中にLCCを設立し、関空を拠点にしているが、これもターミナル使用は料金の問題で難航すると見られている。 (23年1月1日)
7. 昨年7月に開業した「成田スカイアクセス」は、日暮里〜成田間を36分でつないで、都心との距離を縮じめた。 混雑時には外国語を話せる案内役ボランテアも配置した。 一方、難点は空港に入る際の検問で、自動車用のゲートでは渋滞も起き、監視カメラによる簡易化が望まれている。( 1月 3日)
8. 日本航空のジャンボ機(B747型)がこの3月から一斉に姿を消すことになった。 就航が昭和45年であったから、丸40年働いたことになる。一度に国際線で500名、国内線で600名の乗客を捌いたのは一つの歴史を物語る。同時に昔馴染んだ鶴丸マークが復活するという。ここれは社員、OB、航空フアンにとっては朗報であり、会社更生法の手続きも終わったようであるから、長年民間航空界に席をおいた者としても、一日も早い日本航空の元気な姿を望むのは、当然の期待であろう。(3月1日)
9. 中国の格安航空会社春秋航空が、上海〜茨城間の現在週3往復(片道4千円)を、3月末から5往復に増便するという。日本で98番目に開港した茨城空港は定期便を持つ空港の一つとして、県は今後どの様な観光特色を持つのであろうか。(3月2日)
10. 東京都の石原知事が4選問題で話題となっているが、かねて運輸大臣を経験したことから、航空問題については一歩進んだ意見をもっている。現在殆ど不使用の横田基地を日本側に返還するか、またその大きな空域を民間が使用できる様に縮める用意はないのか等について、先にこの欄でも述べた。さらに東京の一等地である六本木に米軍専用のヘリポートがあることも気に入らぬようだ。これらは主に外務省の弱腰が原因となっていると説く。(3月7日)
11. 山陽、九州新幹線(新大阪〜鹿児島中央)が、3月12日全線開業する。所要時間、料金は別表の如く一気に短縮され航空旅客の多くは鉄道に向かう傾向が明らかである。 一般に移動の所要時間が3時間以内であれば鉄道が優勢に、 3時間を超過すると航空機が優位とされる。
博多〜鹿児島は所要時間は1時間20分となり、明らかに航空旅客は減少というより、路線がなくなるであろう。 鹿児島は都心から空港まで1時間を要するので、問題外であるが、鉄道の事故又は天候上、空の便しか頼れない場合は別である。(3月 9日)
12. 西広島空港(日空港)が来年秋をもって閉鎖され、ヘリポートとして使用される予定である。同空港は昭和36年に開港し、中国地方の拠点空港として活躍したが、大量高速輸送時代に入り、同県東地区山中に新空港が出来て、その座を譲った。小型機用空港として市内のアクセスも良く、定期路線をもつ空港が閉鎖されるのは、初めてのケースだという。時代の流れとでも言うか。(3月10日)
13. 米航空会社は、格安航空会社をはじめとして、 トイレ使用以外はサービス料として一定料金をとる計画中であるという。 手荷物や機内食の有料化は、2008年から実施しており、専門家は「機内は演劇チケット、ハンドバッグなどが買えるショッピングモールになる」という。大手航空でも数ドルで、他の客より先に搭乗できるとか、数種のシャンペンを楽しめる。とは言うもの、この程度が限界で今後は客の要望に応える必要があるとのことで、我国はじめ各国も、その様になるのではないかと思われる。
14. 3月11日に発生した東日本大震災(マグニチュード9)により、津波で被災した仙台空港では、16日までヘリの使用に限られていたが、米軍の協力もあって17日から1500メートルが使用できることになった。これによって救援物資の輸送が可能になった。同空港は、新潟とともに東京路線は新幹線の進出により廃止されていたが、こういった非常の際に、改めて重要な機能をもつことが判明した。 最近発表された西広島空港の廃止や、伊丹空港の存立なども充分な検討を要するものと考えられる。(3月12日)
15. 3月11日の東日本大震災にかかわる原発事故の発覚以降、欧米航空会社が成田空港を避け、中部や関西空港を利用する動きが出た。 国交省は20日から羽田、成田空港の放射線量をホームページに載せ、安全を訴えるが、外国人の「日本忌避」の気分は簡単には消えはしない。東京一極集中が地方からの電力供給なくしては成り立たないという現実。大震災は日本が抱える矛盾をもえぐり出した。この最中に東京は他県と共に知事選挙を迎える。(3月25日)
16. 東日本大震災で被災し、危機的な状況が続く東京電力(株)の福島第一原発の様子を、新潟県妙高市の航空写真撮影会社「エア・フォト・サービス」が無人飛行機で撮影している。政府や東京電力から要請を受け、これまでに計150枚の画像を提供したという。山崎社長は「人体への影響が全く無い方法で、現況を把握するのが使命。
  提供した情報が役に立てば」と話す。原発上空で空気の採取も可能といい、今後の飛行要請に備えている。(3月30日)
17. 災害時に民間のヘリが活躍する。平成7年に設立された全国自家用ヘリコプター協議会は、東日本大震災時、陸路からでは支援が難しい被災地に、宮城県柴田町のスポーツランドやサーキットに集められた物資(医薬品、飲料水、 トイレットベーパーなど)を、孤立している被災地、避難所、学校、病院などへ空輸している。経費不足のため、防災医療航空支援基金を立ち上げた。そして孤立集落への医師、看護師の派遣にも意欲を見せている。(4月2日)
18. 福島第一原発事故の長期化を懸念する外資系金融機関の幹部らが、日本を脱出し、アジアの金融センターである香港に"避難"している。香港当局はその「受け皿作り」を急ぎ、ライパルのシンガポール、上海に差をつけるため、必要な臨時ライセンスの発行措置をとった。一方、香港国際空港は3月31日、航空便の発着数が983便となり過去最高を記録。発着数の増加は、空港当局の収益や市内のホテル稼働率のアップなどにつながる。 3月の香港は通常、観光のオフシーズンだが、海外各社が乗員の健康確保のため、日本発着時の滞在時間を短縮し、燃料補給や機体整備業務などを香港に移管しているのが背景にあるという。人材の呼び込みに加え、当局の迅速な対応が“大震災特需”を香港にもたらしたようだ。(4月5日)
19. 成田は、エア・カナダによるカルガリー(バンクーバー東約750KMの都市)線の増便や、全日空による相次ぐアジア各国への路線開設により、北米とアジアを結ぶ「結束点」機能も再確認される形となった。成田空港の目的とする年間発着容量30万回はアジアのハブ空港としての質量には申し分ない。 羽田の国際化が実現したとは言え、発着枠は年6万回で、夜間、深夜に限られているので、成田との住み分けは出来ていると言える。 国交省は空港容量の拡大から、ビジネスジェットの推進を図っている。これは企業、団体、個人が商業目的で利用する運送のことで、1)社用機や個人機などの自家用機2)航空会社の専用機によるチャーター運航があるが今のところあまり進捗していない。成田空港の森中社長は、「アジアの国々が発展している中で、ファーストクラスの定期使を待ちきれない程多忙なビジネス客が台頭している」と語り、「成田はその様なビジネスジェットのニーズにも対応できるよう展開して行く」方針を示している。また同社長は、LCC会議に出席し、この勢いが予想以上であったと語る。よって成田は、早ければ2011年度中に25万回、数年後に30万回が実現されるであろう。このためには誘導路、ターミナルビル等の増設が必要で、それを進める意向であり、その為に都心とのアクセスも36分まで短縮される見込みである。(4月10日)

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第46号 平成22年12月1日発行

「民間航空界の動き」

顧問:久保俊郎

 

1. 帝人は、エアバスに2011年度から航空機向けの炭素繊維製複合素材を供給する。欧州に新工場を建設することも検討している。これは機材の軽量化による燃費性能向上につながるため、普及が見込まれ、東レもエアバスから受注している。6月27日
2. インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)を結ぶ航空路線の新設が相次いでいる。今年初めの自由貿易協定(FTA)発効などで両者の経済関係が拡大し、旅客の増加が見込まれるためである。6月28日
3. 米国が提唱するオープンスカイ(航空自由化協定)は、今やアジア各地の航空界にも拡まっている。韓国→日本の運賃が、従来の半分、 1万5千円を目指すチェジュ航空は本来化粧品会社であったが、航空界に現れた。化粧品を安く提供するほか、パイロットは大手会社を引退した人を使い、給与はかつての3分の1であるという。その他運航費の節約のため、乗務員が到着前にトイレの清掃をし、かつ機器の点検をして停留時間を短縮するという。羽田、成田の運航容量は今年末には年52万回から75万回になるので、これら格安航空会社の進出は、我が国の航空界にとって脅威である。6月30日
4. JALはパイロット候補として採用した社員130名の養成をあきらめ、営業など地上職への職種変更を検討中という。路線や機種の減少、変更で必要性が薄れたこと、及び経費(一人数億円を要する)の削減のためである。7月1日
5. 新設地方空港の経営不振が問題となっている。花巻、神戸、静岡、松本から日航が運航をとりやめ、代わりに新興会社が引き受けたものの「見切り」も早い。採算がとれないのだ。官の支援がどこまで可能なのか。航空のみならず、鉄道、道路を含めた交通体系の整備を必要とする時代になった。7月2日
6. 中国の観光客が今迄の10倍と予測され購買力も増加するという。これは査証(ビザ)の発給が中間所得層まで広がったことであり、年収25万元(約340万円)であったものが、6万元(約80万円)に、かつクレジットカードでも買物ができることによる。比較的高給の企業者や、官庁などの「勤め人」加わったためである。日本旅行の人気は、温泉、デズニーランド、富士山などであるが、化粧品、家電製品などの買物も魅力である。一回あたりの買物は、13万円と限られているが、日本側のサービスも向上しており、全日空はインターネットの自社のサイトで中国語の表示をはじめ、人民元で航空券を購入出来るようにした。ただ中国は都市に富裕層が集まっているが、地方との格差は依然としてはげしいものと私は考える。7月2日
7. 日本航空に女性機長が誕生した。42才で身長155センチ、米国で自家用、事業用免許を取った。女性管制官については先号で紹介したが、女性機長(定期運送事業用操縦士)は初めてで、 7月12日初飛行。教官は「厳しい要求にきちんと応える芯の強さがある」と評価し、本人は今後、後輩の指導にも力を入れたいといっている。 7月3日
8. 地方空港の愛称が続々表れている。羽田、成田、溝辺などは、地名をとったものだが、愛称の知名度を呼び水に搭乗率向上につなげたいとしているが、結果は如何になるか楽しみである。7月3日
9. 格安航空会社LCC(Low Cost Carrier)が米韓で台頭し、大手を脅かしている。米ではサービスの向上にも力を入れ、韓国は日本向け近距離空港への進出が日立つ。大手は機体を2種にしばり、整備コストを節約する。また路線構成も、ハブアンドスポークを採用して搭乗率を上げる。韓国は日本の地方空港との路線開設が自由化されているので、積極的であり、今後国際間の競争は激しくなるであろう。7月4日
10. 太陽光発電でプロペラを回すソーラー飛行機で世界一周を目指すスイス人ベルトラン・ピカールさん(52才)が8日、世界初のソーラー飛行機の夜間飛行に成功し、約26時間飛行の末、パイエルヌ基地に着陸した。 「ソーラー・インパルス」は7年がかりで開発、炭素繊維で両翼63メートル、中型乗用車並みの重さ。12000枚のソーラーパネルで発電するプロペラ機。高度8500メートルまで上昇後水平飛行して無事着陸した。7月10日
11. 10月から羽田の滑走路の増設により、日航、全日空は、北京、上海、香港線を一便づつ運航する。さらに両社は増便を計画しているが、中国側は国内線の増加を計画しており、交渉がストップした。これは中国の国内事情のみならず、日本の空港の使用料が高いことも交渉を難しくしている面もあるという。7月16日
12. 全日空の藩陽便に、「北回り」が3年がかりで許可された。ウラジオストク、長春上空通過で従来より15分短縮される。毎日便であるため、年間ドラム缶で800本の燃料が節約できるという。7月17日
13. 成田スカイアクセスが7月17日に開通し、時速160キロで空港→東京中心間を36分で結ぶこととなった。これでニューヨーク→ ケネデイ空港、ロンドン、パリ、ローマ、北京等都市・空港間のアクセスは並ぶこととなった。 これは空港の物流の有効利用の企業立地が広がったといえる。 関連地域の人口は約4100万人、東京の昼間人口は1500万人で、インターネットの時代に入り、交通の便と地価が安いことでは、成田以上の後背地はないといえる。7月17 日
14. 三菱地所グループは成田空港近くに、低価格を売り物とする大型アウトレット施設を建設する予定。アウトレット施設とは衣料品、バッグ、家電商品等を低価格で売る店舗。敷地は約200ヘクタール、7月に個人観光ビザ(査証)の発給条件が緩和された中国人客などを狙う。ちなみに中国人海外旅行者は、10年に前年比11%増の5300万人に達する見通し。
同様に韓国もビザの規制緩和に動いているので、日韓のアジアのハブ(拠点)空港を軸に、中国人客の争奪戦が激化することだろう。7月19日
15. 羽田の4本目となるD滑走路の完成に伴い、昼間の発着枠が現在の年33万回に増え、増加する3万回(一日40往復分)が国際線に割り振られる。 深夜早朝の国際線枠3万回も新設。 3年後には44万7千回の計画。 よって海外13都市、国内地方都市50と結ぶ羽田は、世界と直結することとなり、北京の年43万回に匹敵することとなる。7月21日
16. 成田空港会社は2013年春にも格安航空会社(LCCローコストキャリア)専用のターミナルを新設する。格安航空会社は既存の会社に比べ、運賃が2〜8割安く、東南アジアで急成長している。現在成田使用は、豪ジェットスター航空のみだが、料金を安くするため、機種を一つに絞ったり、機内サービスを簡素化して、アジアでも15〜20%割引の会社が見込まれる。 成田の将来30万回の発着枠の一割程度は、この格安航空が占めるものと見られる。成田のターミナル候補地は別図の通りである。7月25日
17. 7月25日午前11時頃、埼玉県秩父大滝の山中で、山岳遭難の救助活動にあたっていた同県の防災ヘリコプターが墜落し、機長ほか防災隊員ら4人が死亡した。まことに痛ましい事故である。 事故調査では「セットリング・ウイズ・パワー」という状態に陥った可能性もあるという。この状態は、メーンローター(主回転翼)が吹き下ろす下降気流によって空気の渦ができ、その中に機体が入って沈み続ける現象。しかし事故原因については機体やエンジンの状態を確認するため、半年はかかるという。7月27日
18. 全日空は海外の航空会社やファンドと共同出資で、格安航空会社を設立する。アジアをはじめ6時間以内で飛べる外国との間を、半額以下の運賃で運航するサービスを来年にも開始する。これは中国等に対抗するものだ。 新会社はANAとは別ブランドとし、社長も海外の格安会社の経験ある人物を選ぶ。資本金は500億円を超える規模だが全日空が30〜50%、海外は30%を見込む。国内の拠点は関西空港だが、着陸料等が高すぎるため、今後大幅な減免さ置を政府や関空会社に要求していく。8月2日
19. 日航のジャンボ機の墜落事故から今年で25年。その事故調査が優先か、それとも刑事事件としての捜査が先か、米国では事故調査を優先させ、真相を引き出すために当事者の刑事責任を免責するという。 日本では安全委による原因究明より、警察による当事者の刑事責任の追求に重点が置かれてきた。これは私共が現役であった頃もしばしば経験したところである。約10年前静岡県上空での日航機同士のエアミス事故では、管制官2名がパイロットに誤った指示をしたことが原因だとして、高裁で有罪判決(上告中)を受けた。 事故の態様は多くの要因が絡まって起きるから、背景まで調査して原因を突き止めなければ解決とはならない。要するに事故発生の場合、関係者を処分することが先なのか事故原因を特定して再発を防ぐというのが問題点であり、当然調査にはかなりの時間がかかるというのが実態である。8月14日
20. この夏は登山による遭難者が多く、救助に当たったヘリが墜落して機長ら5名が死亡遭難者の女性も死亡(7月25日、埼玉県秩父市の山中)現在事故原因調査中であるが、地形が急なスリバチ状になっているため原因調査には長くかかる模様。
a. 8月1日埼玉県防災ヘリ墜落現場を取材していた日本テレビの記者とカメラマンが沢で死亡しているのが見つかる。
b. 8月2日日高山系でツアー登山客8人を、北海道警などのヘリが救助、けが人なし。
c. 8月10日北アルプスの槍ヶ岳(3180メートル)で岐阜県警のヘリによる救助活動。 現場は険しい地形で雨雲が迫る不安定な天候。男女の登山中の遭難で9日午後女性は15メートル転落、10日午前登山者(男性)に救助を求めたが、男性は雪渓と岩場に落ちて死亡。 ヘリは遺体の収容、隊員輸送で鍋平と現場を6往復、女性は救助された。 岐阜県警ヘリの隊長は「救助現場が戦場と同じ。万全の準備をし、最悪の条件を想定して向かう」と。
登山者へのアドヴァイス
 @携帯電話は命綱
 A赤や黄などの目立つ色のウエア
 B自分の存在を知らせる鏡やフラッシュ、煙をあげるなど
d. 8月17日北アルプス剣岳を富山県警ヘリが男女8名を救助、けが人なし。
e. 北海道日高山系の沢で遭難した東京理科大ワンダーフォーゲル部の学生3人の死亡を確認。
さて8月18日海上保安庁のヘリが瀬戸内海で島と島を結ぶ送電線に接触して墜落、機長を含めて5名が死亡、海難救助にあたる役所のヘリが墜落事故で死者を出すとは、飛行目的が何であれあってはならないことである。8月20日
21. 最近、LCC(ローコストキャリアー)格安航空会社の進出がはげしい。羽田の拡張で発着枠が増えることを狙って、クアラルンプール〜羽田間を5000円で結ぶという。格安のためには機内サービスの低減(食事などの有料化)機内従業員の清掃兼任、更に一番大きな節減は、元機長を現役時代の給与の1/3で運航するという。ここで問題は「安全」である。羽田あたりで事故でもおこされ、長時間閉鎖などになると、日本のハブ空港の意味がなくなる。これが単なる心配であればよろしいが。9月22日
22. 去る9月中旬に羽田で行われた空の行事は、4本目の滑走路の新設などで意義あるものであった。私は空はもとより空港自体の安全に長年携わった関係で、申込みを必要とする「Dランウェイの初歩き」を希望したが、残念ながら選に漏れた。致し方なくビル6階にて羽田80年展の一部にDランウェイの件があったので、話を聴くにとどまった。 Dランウェイは従来のBランウェイとほぼ同じく、04ランデング、22テイクオフを認めない方針のようである。(新ランウェイの実際の方向は05/23)。係員が旧港湾局出身の人で、その理由については良く知らないようであった。この件は私も現役時代、年に1〜2回は必ずこの滑走路向けの強風が吹くので、航空会社から再三使用を認めてもらいたい要望があったが、堅く断った理由は、川崎市に原子力工場ができたため、その上空は飛ばしてはならないというきびしい通達があったからである。
またこの新滑走路では多摩川の流れのために、日本でははじめての工法である北2/3は埋め立て方式、南1/3は桟橋方式をとったときくが、そのつなぎ目は如何様になされているか知りたかったが、それが出来ずまことに残念であった。9月23日
23. 空港問題のうち、羽田、成田の関係は、国内線、国際線の分離で設立後30年位前にさかのぼる。最近羽田の拡張に成田も危機感を持ったのか、関係9市、県、国、空港会社間で協議の結果、従来年20万回の運航を、30万回に増加することを容認した。このさ置で、遠い、狭い、高いのうち、狭いが解決する。ただし運用時間は6時〜23時で現行のままで、騒音問題については、関係家屋に法基準以外の防音工事を実施する。また空港従業員は4万8千人で、3分の1は成田市民で、空港の活性化に意欲を持つであろう。10月10日
24. 格安航空の参人間題がしきりだが、中国の春秋航空の地方空港に対する対応もさまざまだ。佐賀空港は独自に航空会社に談判。「着陸料は安く、福岡市にも近く、会社の条件とも下致する」と。秋田県に対しては、会社側から「航空会社がコストを抑えるための支援策を検討したい」と。また静岡空港では、着陸料値下げを求められたり、採算が仙台空港は下げた着陸料は県が負担せねばならず、予算を伴い、もし半年で撤退などとなると困る。と慎重だ。10月15日
25. いよいよ羽田に国際航空便が飛びはじめるという。24時間体制故、深夜出発し翌朝目的地着、その日仕事ができる。逆の場合も同じで、空港アクセスが良いので13分で都心に着く。国際ビルには江戸情緒ゆたかな商店街があったり、企業が店を出し観光面からも話題を添える。 ただし問題もある。D滑走路をA、Cの従来線と同時使用は、衝突を避けるため、管制官を悩ませる。またDに至る従来空港島を結ぶ誘導路は7往復用2本が設けられたが、いずれも翼端が海上にはみ出ることで、海上からの安全、特にテロに対する警備が24時間態勢で必要になることなどである。10月30日
26. 最後に、皆さんにクイズを一つ 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい
島国に住む日本人にとって、空港は「国境」を肌で感じる場所である。@ は麻薬や銃器の密輸に目を光らせ、入国審査窓口では16歳以上の外国人に対し、顔写真とAを確認している。また飛行中のパイロットに離着陸の指示を与えるB、入国者や海外から持ち込まれる動植物・食品から伝染病などが広がらないよう調べる検疫官など、多くの公務員が業務に携わる。 一方、警備会社が受託するX線を使った手荷物チェックのほか、商品やサービスの販売・提供など民間企業の業務も多い。 10月に開業するC空港の新国際ターミナルには100を越す商業設備が出店する。空港は、乗り継ぎ客を含めて様々な人々が行き交うひとつの″街″ともいえる空間で街を安全、快適に運営するためにCでは約3万5000人が働いている。
【問い】 1.空欄@〜Cを埋めなさい 2.下線部のように乗り継ぎ客の利用を見込んで近距離の路線網を充実させる空港を何と呼びますか? 答えは下欄に
【問い】の答え1。 @税関A指紋B航空管制官C羽田  2。 ハブ空港

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第45号 平成22年6月1日発行

「民間航空界の動き」

顧間 久保 俊郎

1. 羽田空港では4本目の滑走路が本年10月に出来上がり発着回数が昼間で30万回から41万回に増える。最初の5万回のうち3万回は、アジアの近距離国際線に、残りは国内線に割り当てられ11年以降増える6万回の配分は追加発表されるだろう。 ところでアメリカがしきりにとなえる「オープンスカイ」(航空自由化協定)とは、航空会社が空港や便数を決められる空の自由化のことで、日米間は12月10日を目途に締結をする。成田、羽田とも発着増加はわずかであるから充分な協議がなされるであろう。 一方地方空港は発着枠に余裕があるから、「オープンスカイ」が充分にその効力を発揮するであろう。 当然運賃の低減もなされるだろうから、地方都市は充分その点も考えねばならないだろう(12月 9日)
2. 上述の|オープンスカイ」のポイントは次の通りである。
1) 日米航空会社はともに自国間、中間地点、相手国内地点、以遠地点のいずれも制限なく選択でき、自由にルートを設定できる。
2) 便数、参入企業数は原則無制限
3) 10年10月までに署名し実施
4) 10年10月以降、羽田空港と米国惜1で一日4往復まで旅客便を運航
5) 10年3月の成田空港発着枠拡大時に、米国航空会社の発着枠シェアを28%から25%程度に低下、その後もシェアの低下を目指す。(下左図参照)(12月10日)
3. 米ボーイング社のB787型機(愛称ドリームライナー)は予定より遅れて12月15日試験飛行を3時間行った。 300人乗りのこの機体の5割に東レが開発した炭素繊維と樹脂の複合材を使用し、強度を高め、かつ軽量化を実現し、したがって燃費も5割方節約するという。 主翼部分は三菱重工が建造、日本の重工メーカー3社が機体の3割以上を担い「準日本産」といわれている。 世界運航各社が300機予約しているが、全日空は55機、日航は30機予約しているが、来年中の就航は間違いないとしている。(12月16日)
4. 関西国際、大阪(伊丹)、神戸の3空港のあり方をめぐり、「関西3空港懇談会」が設けられ、3空港の一元化について平成23年度から一元化管理を目指すという。まさに羽田、成田をめぐる一元化の関西版といえる。ただ、大阪の知事は伊丹空港を廃港とするとの意見に対し、兵庫県知事は真っ向から反対しているという。 伊丹は歴史もあり、市内とのアクセスも良し、私共の考え方としては、大阪に行くには伊丹と考える。 関西国際は使用頻度が少ないとはまことに勿体ない感じで一杯である。静岡についてはやはり九州とか北海道など国内長距離線と近隣アジア路線に日を向けて存続をはかるということだろう。今後の有効な討議を期待する(12月21日)
5. 国交省は羽田の滑走路が4本に増設される今年の10月に、発着枠の各社割当を発表した。全日空に115便、日航に75便とし(発着をそれぞれ05便)全日空に手厚く、新興スカイマーク、エアドウ等4社に各4便計37便である この差は、発着枠の効率活用つまり夜に到着し翌朝出発する「ナイトステイ」について全日空が過去5年間に優っており、これがビジネスマンのニーズが高かったという。(22年1月6日)
6. 国交省は1月14日から羽日と成田の空域を統合し、民間機の航空管制を羽田に一本化する。羽田と成田の上空4200メートルから5400メートル付近をレーダーで監視する「ターミナル レーダー管制」より高い「航空路管制」と管制塔から目視による進入や地上の走行を指示する「飛行場管制」の間をつなぐもので、離陸直後や着陸を控える機に速度や進路を指示する。
羽田と成田の上空は、従来百里空域、横田空域をそれぞれ自衛隊と米軍が管制し、大変混雑していた。羽田は今年10月4本目の滑走路が完成し、年間30万回の発着が41万回になり、成田はB滑走路の延長で、平成26年度には20万回から30万回まで増える。 「空域をより広く有効に使用し、連絡、調整をスムースにする」ため、成田の管制官56名を羽田に移し、計234名態勢で両空港の発着便をレーダーで管理する。成田には62名が残る。(1月10日)
7. 日本航空は1月20日「会社更生法」を提出した。 事実上の倒産で、原因は長い間の新幹線や道路公団との客の奪い合い、社内の人事問題、労使問題等いろいろな不具合があったが「企業再生支援機構」を昨年10月発足させ、資産査定や、主取引銀行との調整など第3者機関の企業再生支援委員会が、支援の可否を決めるとしている。再生は3年を予定している。(1月22日)
8. 会社更生法に基づき経営再建中の日本航空は、航空連合の1つ「ワンワールド」に属するアメリカン航空と引き続き業務の提携を決めた。 連合にはこの他「スターアライアンズ」には全日空や米ユナイテッド「スカイチーム」にはデルタ航空、大韓航空などが属し、提携業務を行っている。 当初、デルタ航空が日航との提携を望んでいたが、決定に至らなかったのは日航の再建に3年という制約があり、これが主たる原因であったとみられる。(2月10日)
9. 全日空は社員の基本労働時間を週37時間から40時間にする方針で、対象は管理職を含めて1万4千人 この延長は、3月に成田、10月に羽田の発着枠がそれぞれ増大するための対応という。また機内サービスについて、飲み物は日本茶と水のみが無料で、コーヒー、ジュース等は有料化する。 労働時間の延長は組合との話し合いがうまく行くかどうか? (2月15日)
10. 新興航空会社スカイマークは来年3月以降に米ボーイング737型機6機をリース調達し、計18機とする。羽田の拡張に対応して4便に振り向けるはか、神戸を起点として、4月茨城1往復、7月に札幌1往復、9月に鹿児島3往復、10月に熊本3往復、12月に長崎2往復を開設する。 スカイマーク社は社機を全部B737に統一し、整備費、空港使用料を減らす。よって10年3月期の営業損益は31億円の黒字(前期は25億円の赤字)に転換を目指している。(3月3日)
11. 現在、民間空港は新しい茨城空港を入れて98ある。そのうち採算がとれているのは10空港に満たない。如何に需要予測があいまいであったかという議論が盛んだが、庶民の意見として、すべてが無駄なものではなく人命救助の際、重要な場所となる。地震や津波といったとき、ヘリや小型機の離着陸場として重要な場所となる 地方空港をなくすな!役割は観光を含めて充分あるのだと。(3月10日)
12. 3月11日開港した茨城空港に関連し、とかく需要予測が甘く、日本の国土には空港が多すぎるとの感覚が多い しかし、世界全体を見た国際航空運送協会(IATA)の予測では、総体的に赤字は7割減で、中南米、アジア地域は急回復し、欧州と北米、日本など先進国が赤字で、そのスピードが異なるIATAは足元の需要が堅調なことから、2010年の需要予測も上方修正 旅客を前年比4.5%増から5.6%増、貨物を7.0%から12.0%増に修正した 「空のネットワーク」は、その国が国際社会で存在感を発揮するために不可欠のインフラで、韓国は航空を戦略産業に位置づけている(3月12日)
13. 成田空港では昨年10月、B滑走路が2500mに延伸され、大型機の発着が可能となった。 よって発着枠の拡大により、成田空港初就航となる中東路線、3月28日にエテイハド航空(アブダビ)とエミレーツ航空(ドバイ)いずれもアラブ首長国連邦、及び4月26日にカタール航空(ドーハ)が就航する。リゾート地として脚光を浴びる中東へのルートが加わり、これとヨーロッパやアフリカヘのアクセスも向上するという。 果してこれらの路線が成功するか見守りたい。(3月24日)
14. 2012年の宇宙旅行の商業化を目指す英ヴァージン・グループは3月22日、米カリフォニア州で、旅客が乗る宇宙船「VSSエンタープライズ」(6人乗り)を、航空機2機をつなげた形の運搬用母船の中央に合体させた状態で、初めて飛行実験を実施し、成功したと発表した。(3月28日) 
15. 女性航空協会が発行している「空のワルツ」5月号に、女性航空管制官を特輯した。 今から30年前、時の労働省婦人少年局長であった森山真弓さんが、男女雇用機会均等法の成立に尽力し、そのさきがけとも言える女性管制官を、人事院の試験で採用した。その第1号が春田(つくだ)慶子さんで、お父さんは鹿児島空港事務所の総務課長であった。時の人のお父さんということで、ジャーナリズムの取材は大変であった。ちなみに森山真弓さんのご主人森山欣次氏は当時運輸大臣であった。(4月 9日)
16. 全国98空港のある中で、定期便のある70余空港のうち、22空港の経営が赤字である。 2020年ごろを目途に空港関連事業(駐車場など)と空港本体の経営を一体化し、民営化で無駄を削減する。一つの例として大阪(伊丹)と関西空港の一体化で空港を徹底活用することにより、着陸料を段階的に引き下げるることで航空運賃の水準を下げ、需要を促し、関西の赤字を無くそうというものである。(4月14日)
17. 大地震、それにもとずく火災、津波等や自然現象が荒れまくっているが、今回のアイスランドの火山噴火は、欧州各国の広域で、航空機の運航を困難にした。何時恢復するか、専門家の意見はまちまちだが、この噴煙を吸い込むとエンジンに付着してその作用を悪くするのみならず、最悪の場合は墜落が予想されているので、空港を閉鎖した国が多い。国内ではしばしば運航停止の経験があるが、国際的に長期間に及ぶのはあまり例がない 想い出すのは約40年前、鹿児島の桜島が時々噴火したので、火山桜島がActiveで上空を飛ばない様、2種ノータムを出し、今もAIPで生きていることだ。(4月20日)
18. 今や航空界は大量高速輸送時代から、中型軽量機による運航頻度の高い、かつ静かな輸送機の時代に入ったと言える。中心は三菱重工である。軽量化を実現したのは、炭素繊維と樹脂(プラスチック)を混ぜて衝撃吸収力を高めたものである。従来、主翼と胴体は「アルミニウム、合金」と言われたものを、上記東洋レーヨンによる炭素繊維が使われ、重さは鉄の4分の1、かつ切断に対する強さは鉄の10倍という 既にB787用として輸出されているMRJ(三菱リージョナルジェット)は昭和37年〜48年に製造し、日本はじめ世界で活躍したYS 11に次いで、航空機産業の市場で活躍している。(4月22日)
 
19. 国交省と大阪府知事との話し合いで、関空と伊丹の間で、経営統合を図るという。 関空は一兆円を超える負債をかかえており、伊丹は年間3〜4千万円の黒字で、関空の赤字を数年で解消したい方向で、28日に開催する「成長戦略会議」て公表される。伊丹については、かねて知事が廃港を唱えていたが、関空のアクセスと伊丹の雇用(約2万人)も考えて貰いたいものだ。(4月26日)
20. 日本航空の会社更生手続きによって、採算悪化の撤退路線を45とし、一方、収益性の高い羽田発着の国際路線を約3倍にする。日航の出方次第で空港の対応も変わるであろうし、他の会社とのあつれきも生まれるであろう。これは航空業界の将来にもその構図を大いに左右する。この路線変更に対する銀行の態度は「いくらの収益改善になるか分からない」と冷やかだというが、今後どの様に進展するか見物だ。添付図面を参考に考えてみたい。いずれにしても都会に有利で地方にとっては不利だと言わざるをえない。(4月29日)
 
21. 米国の2大航空会社、ユナイテッドとコンチネンタルが本年末合併合意し、本社をシカゴに置くと発表した。両社とも4万人を超える従業人をかかえ、燃料高と格安航空会社に対抗するためという。 国内線ではユナイテッドが米北東部、コンチネンタルが米南西部を補完しあうし、国際線、特に日米間に大きな勢力を発揮するであろう。 ちなみに、両社はスターアライアンスに属し、全日空も同じ。日航はワンワールドに属し、今後業界再編がさらに進む可能性があるといわれる。
22. 4月15日に発生したアイスランドの火山噴火により、EU27カ国は、12年に予定した航空管制の一元化を、前倒して年内に発足させることとした。
これはブリュッセル(ベルギー)の運輸理事会で決定したことだが、今回の火山灰による被害は、一週間に欧州の各社で10万便以上が欠航、各国で飛行禁止や空港開鎖で1千万人以上、25億ユウロ(約3100億円)の被害を出した。 この管制は果して何語でやるのか興味があるところだが、嘗ってA300を欧州から移送した当時の国内航空パイロットは、仏語の管制に苦しんだことを聞いている。(5月6日)
23. 羽田の拡張工事が今年10月に完成するのを見越して、米運輸当局は、早々に米国→羽口便4便の就航を発表した。これは日米オープンスカイ(航空自由化)に基づくものでアメリカン航空がニュウヨーク→羽田を10月1日から、ハワイアン航空がホノルル→羽田を、デルタ航空はデトロイト→羽田及びロスアンゼルス→羽田を運行するもので、羽田は約30年振りで国際定期便を再開することになる。(5月8日)
24. アイスランド火山の噴火がまたしても1カ月足らずで再び発生し、スペイン、ポルトガルで欠航便が相つで出たと報じられ、今後の状況が不安視されている。(5月9日)

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第44号 平成21年12月1日発行

「民間航空の動き」

顧問 久保俊郎

1. 静岡空港は今年3月、2500メートルの滑走路新設でオープンの予定であった。しかし滑走路端から1400メートルの地区に立木が存在し、これが安全着陸を阻害するため、暫定的に滑走路を短縮して使用する計画もあった。いろいろ協議の結果、フル使用のため立木を伐採し、代わりに町長は退任する条件で、6月にオープンした。就航予定路線は札幌、沖縄、ソウル線だが、全国で99番目に出来た空港が、果してこの不景気の時代に予測通りの集客ができるかどうか不安である。(6月20日)
2.

ナショナル・フラグキャリアを潰すな。戦後最大の第3セクターとしてスタートした日本航空が、この一年余の財政、金融の不具合から、存亡の危機に瀕している。会社は

 *企業年金制度の改定(支給額の引下げ)

 *特別早期退職の実施
 *国際、国内線で撤退を含む路線の整理、縮小
 *貨物事業は他社との提携を含め、抜本的事業改革等
を進めたが、結局国が1000億円の危機対策融資を実施することになった。今までも同時多発テロ後、1540億円、イラク戦や新型肺炎SARSが出た03〜04年度に1100億円が融資されている。浮上するために、また国頼みではなく、自力で何とか日本を代表する航空会社に立ち直って欲しい。(7月10日)

 

3. 国が管理する空港のうち、22空港が赤字経営に落ち込んでいるという。空港の収支は社会資本整備事業特別会計で管理されているが、営業損益は別表の通りである。
赤字の大きいのは福岡、那覇、新潟、羽田等だが、黒字は大阪(伊丹)千歳、鹿児島、熊本で、東京からの利用度、アクセスの良さ等で想像できる。株式会社組織の成田、関西、名古屋は未調査。
航空会社は不採算路線から撤退する動きも相次いでいる。
4. 所謂ジャンボ機といわれるB747-100型機(500人乗り)が、1970年(昭和45年)に日本(羽田)に出現して約40年、日本の空を引退することとなった。
当時は大量高速輸送時代として、DC10型などとともに、国際線をはじめ、日航が68機、全日空が23機使用し、多客期、台風などでスケヂュールが乱れた時には、大型機としておおいに活躍した。現在400型機が出現して、主として燃費と騒音の問題で、在来機はクラシックと呼ばれる様になった。)
私が羽田で初の就航を見たのは、PAAの世界一周機で、同社は職員全員で春の一便を目指して毎夜、冬の寒さをついて、手荷物、貨物の取扱を訓練していた。(7月24日)
5. 「ツェッペリン伯号来る」とて(空中)飛行船がはじめて日本の空にやってきたのは昭和4年(1929年)8月というから、丁度80年前で、私は4才の時であった。
全長235メートル、高度600メートルというから、日本では複葉機が飛んでいた時代だ。
「UFOが飛んできた」という感じに似たものではなかったか。だが黄金期は短く、37年に事故があり、一次大戦中にすべて解体された。
日本では戦後97年にツェッペリンNT号を作成し飛ばした。羽田に基地をおくことは、その速度や高度の関係で輻輳する定期便の合間をとって飛行することは難しく、しかし、ゆったりと眼下の景色を楽しみ、レストランの食事がとれるとあっては、今後世界一周の船の旅と並んで楽しませるかも知れない。(8月19日)
6. 民間航空界は人の輸送も、貨物の輸送も苦境に立たされている。そこで日本航空は日本貨物航空と統合して貨物輸送の恢復を図る。全日空は顧客のニーズにすぐ応えられるよう那覇空港をアジアの貨物事業の中継拠点とし、成田、北京、バンコク等国内外8空港を夜に出発、深夜那覇に着いた荷物を目的地別に積み替え、朝までに8空港に輸送するという。いずれも来春を目途としている。ただし、貨物事業の立て直しは、世界経済の回復に左右されるので、実現には時間がかかると見られる。(8月22日)
7. かって世界航空機産業の1/4を占めたロシアは、競争力を失い、欧米のボーイングやエアバスヘと切り替えを進めている。最大の理由は性能にあり、ツボレフやイリュウシンは燃料消費量は前記欧米機の2倍、他の維持費でも25%高くつくという。航空機の生産でも昨年旅客機は13機で航空会社に納入したのは6、7機。業界で唯一競争力を持つのはリージョナルジェット(地域間輸送機)のスホイスーパージェット(SSJ)リージョナルジェットの分野ではプラジルのエンブラエル社、カナダのボンバルデア社が先行、日本、中国も新規参入を狙ってライバルは多い。「長期的発展のためには人材不足の解消と開発、設計から大量生産、航空会社の購入という関連全体を立て直す必要がある」と関係者はいっている。(9月 8日)
8. 毎日新聞社機ニッポン号が世界一周を果して70年が経つ。
中尾機長(初代東京国際空港長)は、陸軍委託操縦訓練生の一期生で、三菱重工のテストパイロットを務め、 ドイツルフトハンザ航空で最新の無線航法を学び、ニッポン号のパイロットに選ばれた。この飛行を終えて6万キロの航程のあと「決して私たちにとってゴールではないと思っている。
私たちはさらに次のマイルストーン(標石)に向かって進まねばならぬ」と記した。今日の羽田の姿を見透かすように。
ついでながらニッポン号の快挙の2年前(昭和12年)に、朝日新聞社の神風号に京―ロンドン間(1万5千キロ)の往復飛行をしている。(9月9日)
9.

前記ニッポン号は1939年8月26日10時27分、羽田を離陸した。3時間余で札幌着。翌27日米アラスカ州ノームまでの北太平洋横断。午後10時過ぎには乗員7名が酸素不足で次々に失神、高度6300メートルで約1時間全員倒れたまま未知の海上を飛行。

中尾機長の手記には「私たちが眠っている間にもニッポン号は正しい針路で快翔し、私たちの代わりに自動操縦装置が完全に操縦を続けた」16時間弱で太平洋横断に成功し、ノームで大歓迎を受けた。


29日にフェアバンクス、30日にカナダのホワイトホース、31日にシアトル着2泊。中尾機長はここで「日本のリンドバーグだ」とたたえられた。(9月10日)
10. 日本航空は経営不振から、従来の路線縮小、人員の削減に取り組んでいるが、国土交通省は「発着枠の配分基準検討会」で「地方経済活性化枠」の一部変更を検討しているようだ。
羽田と地方中核都市を結ぶ路線13のうち、従来全日空に9路線、日航に4路線配分していたものを、全日空7路線、日航6路線にする方向で検討している模様である。(9月10日)
11. 経営再建中の日本航空が、米デルタ航空と資本、業務提携交渉に入ったことが、11日 明らかになった。日航は収支改善に向けたリストラ策を策定中だが、自力の再建策だけでは不十分と判断。
世界最大の航空会社の支援で立て直しを目指す。なお全日空は07年、韓国アシアナ航空と資本、業務提携を結んでいる。(9月12日)
12. ニッポン号は汚れの目立った機体を洗い、1939年9月2日、オークランド、そして数万の人に迎えられてロスアンゼルスに着き、日本の少年の挨拶を受けた。「日本の飛行 機が来ると聞いてうそだと思いました。ところがおじさん達は本当に太平洋を越えて大変な仕事をしてくだ さった。これで僕たちも「日本人だってやる時はやるんだぞ、と友達に胸を張れます」乗員は皆、こらえきれずに泣いた。
4泊してアルバカーキヘ。8日はシカゴに快適飛行。
 ミシガン湖の向こうに大きな飛行場が見えた。(9月13日)
13. 「米国の本当の力は政治的にも外交的にもシカゴを中心とする中部地方にある。この勢力を無視して素通りしてはいけないJ。1939年9月初旬、一行は米ロスアンゼルスで ロッキード社のロバート.クロス社長に勧められたこの言葉を痛感したのはシカゴ飛行場だ。1700メートルの滑走路が7本もある。当 時東京(羽田)はまだ800メートルの滑走路2本が整備されたばかりだった。

9日、空から見たニュウヨークは煤煙に隠れていた。ニュウヨークには8日間滞在したが、頭を痛めたのは欧州情勢だった。 1日にド イツ軍がポーランドに侵攻し、3日には英、仏がドイツに宣戦を布告し、第2次世界大戦が始まっていた。「行けるところまで行く」 が質問に対する乗員の回答だった。(9月13日)
14. 9月11日15時30分頃、岐阜県高山市の奥穂高岳(3190メートル)近くの山中で、遭難者の救助に向かった防災ヘリ(若鮎U)が墜落し、操縦士等乗組員3人が死亡した。地 上に降りた高山署員と救助隊員が遭難者をロープで上空のヘリに引き上げるための準備作業をしていた時で、後部のローター(回転翼)が急斜面の山肌に接触してバランスを 崩したとみられ、機体は大破し、一部は炎上した。山岳部の急ながけがそそり立つ、むずかしい場所ではあったが、一遭難者の救助に向かったヘリが墜落したことは何とも批 判し難く、今後の対応が注目される。(9月14日)
15. 米デルタ航空と資本提携交渉を始めた日本航空に対し、米アメリカン航空の親会社AMRも支援に名乗りを上げていることが13日分かった。日航は当面デルタと交渉を優先さ せる考えだが、アメリカンは日航と同じ国際連合グループに加盟し、関係が深い。航空業界世界1位と2位による「日航争奪戦」に発展する可能性もある。(9月15日)
16. 日本航空の経営不振に関し、新内閣の国交大臣は、経営再建を支援するための「有識者会議」については、「白紙に戻す」。また全日空との2社体制はこれからも維持しな ければならない」と語り、引き続き国交省の主導で再建シナリオを描く姿勢を示した。
ここまでは良いが、国交省が取り組むべき最優先の課題として「観光立国」のさらなる推進をかかげ、その為には「羽田の役割が大事になる」と述べた。私がひっかかるの は「観光立国Jの問題で、航空は観光立国のためのみではなく、すべての輸送機関が観光に役立ってはいるが、何も観光のみではなく、人を運ぶにはいろいろな用件で動きが あり荷物の輸送も今の経済立て直しに重要な役割があることを主張したかったのである(9月19日)/td>
17. 米アメリカン航空、英ブリテッシュエアウェイズ、豪カンタス航空が経営危機の日航に共同で支援を申し入れた。3社はいずれも日本が加盟する国際航空連合「ワンワール ド」のメンバー。ライバルの「スカイチーム」に属するデルタは、日航に金融支援するとともに、自社グループに引き込み、アジア戦略を強化したい考えだ。(本稿11参照)3社側は、 日航がワンワールドから離れると、共同運航の解消などで5億ドル(約450億円)の損失が出ると強調。さらに日航がスカイチームに移ると日米路線 の約6割を同グループが握ることになる。今後の成り行きが注目される。(9月19日)
18. 1939年9月16日ニッポン号はワシントンに到着。大統領に会見を申し込んでいたが、第2次大戦への対応で忙しくかなわなかった。18日にマイアミに飛行。退役大佐から 「飛行場にイアハートの記念碑があるから花輪を捧げて貰いたい」と頼まれた。イアハート氏は初めて大西洋横断に成功した女性パイロットであったが、37年南太平洋で消息を絶った。19日は 米国を離れエルサルバドドル)に向かう。

キューバ島周辺は「水の底までさえて藍色に澄んでいる」かつ、空港は山にかこまれた小さな飛行場であったが、中尾機長は市街上空を旋回して、 機体を軽くして見事着陸。在留邦人に歓待された。乗員の一人が腹痛を起こしたので2日遅れてコロンビア.カリにに向かった。カリは高山に囲まれた盆地で山すれすれに 飛んで着陸した。市長にすすめられ数泊したが、日本の田舎町とそっくりの風景に望郷の念がわいた。


19. 日航の再建について、この10日間の動きはまことに目まぐるしい。従来は、数千億円の補助金を受ける、国内国際路線の整理縮小、6800名の職員整理、更に米デルタ航空、アメリカン航空などの資産、業務提携であった。
9月25日には国交省は「JAL再生タスクフォース」を設置し、10月末をめどに再生計画の骨子をまとめるという。
ところで、日航の再建をめぐる最大の負の遺産は、国の航空行政にあり、採算を度外視して地方空港をつくった結果、運航を強いられた日航は多くの路線で赤字をかかえた。撤退しようにも抵抗が強く、路線の廃止、撤退が進まなかった。
政府は22年度に、羽田、成田の拡張を通じて国際競争で優位に立とうとしているのでタスクフォースの手腕が期待される。 (9月26日)
20. 1939年9月23日 ニッポン号はベルーのリマに向かった。
24日はチリのアリカ。25日はサンテイアゴヘ海岸沿いに飛行。中尾機長は「一番悩まされたのは南米全土を覆っている雲と霧だった」どの飛行場も雲霧の層を突き抜け、い ったん海面に出て飛行場を確認し、低空から着陸する技術を要する。
27日はアンデス越え。6000〜7000メートルの雪山を越え、酸欠を防ぐため、病院用の酸素球を3個用意し た。5時間弱でブノスアイレス着。29日ブラジルのサパウロは深い霧で着陸出来ずサントスに不時着した。(9月30日)
21. 羽田は現在3本の滑走路で、年間発着回数は29.6万回。08年の利用者数はで全人口の半分を占め、アトランタ、シカゴ、ロンドンに次ぐ世界第4位の空港である。
しかも国や都が6700億円を投じて2010年10月末までに完成で第4滑走路を建設中である。この建設法が今までの埋め立て構造に加え、多摩川の流れを妨げない桟橋構造を採用(左図接続部参照)している。滑走路の長さは2500mだが、その人工島の大きさは3100×500mであり現空港と結ぶ連絡誘導路は620mの巨大桟橋である。
  これが供用開始されると年間発着回数は1.4倍となり、年間40.7万回までが段階的に引き上がる。さらに今回の目玉になるのが国際線定期便の大幅増である。具体的には、昼間には東アジア各国、深夜早朝時にはロンドン、パリ等欧米を含む各国が1日40便ほど加わる予定である。成田空港の約3割の国際線が加わる水準である。従って新国際線ターミナル地区の建設も進んでいる。 ビルは5階建てで、プラネタリウムや乗継ぎ客の休憩施設を含む。駐車場として7階建て、2300台を収容する。 国際貨物の処理に隣接施設を建設する。宿泊施設や飲食店を含むと一応の経済効果が期待できる。
これらの計画によって、私が"はねだ"に記した空の日に関する記事で力説した今こそ羽田航空博物館を建設する絶好の機会だと考える。(10月1日) (上記は週間東洋経済10.3号参照)
22. 1939年9月29日にサントスに不時着した。日本人の多いサンパウロを望んだが、陸軍の指示でやむなくリオデジャネイロヘ、10月4日にはナタールに飛行した。いよいよ難所の大西洋横断となる。
9月中に欧州で戦争が激化、 ドイツ、フランスも運航を停止していたが、無線で気象情報を提供してくれた。
5日0時48分ナタール発13夜の月は幻のごとくであった。11時間で到着予定のところ、逆風のため1時間遅れ、ダカールが突然視界に入った。結局12時間の太西洋横断で、太平洋に次ぐ大飛行であった。
ダカールも戦争体制で、6日早朝仏領モロッコに着陸して、あらためて砂漠のカサブランカヘ到着し、いよいよ戦乱の欧州上空飛行となるのである。(10月7日)
23. 二酸化炭素(C02)の排出削減のため、全日空は昨年から乗員訓練所の実機フライトをシュミレーターに切替え、東京−大阪間1万9千キロ往復分29万キロリットルを削減した。
 日本航空は航路について気象条件の良い飛行経路を選び、かつ離着陸時に走行距離が短いスポットを選ぶ。また、機体や機内の部品にも及び、タイヤ素材で80キロの減量、 機内食の皿の軽量化、機内誌質の改良にも及ぶという。(10月11日)
24. 空港問題と政治主導:羽田から搭乗率90%で飛来したB777(525人乗り)が福岡空港に着陸した場合、停留時間4時間と仮定して、着陸料、保安料、航行援助施設利用料の合計86万3千円を毎回国に支払う。こうして20の国営空港が1年間に受け取る空港使用料が2084億円。これを主な財源として空港を新設する仕組みが「空港整備勘定(空港整備特別会計)− 空整特会)」である。
これがムダな空港を造るモトであり、見直しを求めるのが前原国交相である。これに対し財務省幹部は「いまや空整特会最大の支出は羽田の再拡張(4本目の滑走路新設)であり、それに過去の空港整備に費やした借入金の返済や、管制官の給料等の維持費はどうするのか?」「ムダな空港が出来たのは特別会計のせいではなく、政治ですよ」ということで、新大臣は今から勉強が大事です。(10月12日)
25.

来年10月、羽田空港の滑走路が1本増えて4本になると、年間3万回の発着が増え、国際線ハブ空港を仁川やシンガポール等に負けない基幹空港とするという国交省大臣の 発言に千葉側が怒りを示した。深夜、早朝の飛行制限がある成田を羽田が補うなど、両空港を一体化して運用し  「首都圏空港」とする方針を示して双方の問題は一件落着した。

ただ、新滑走路の3分の1は桟橋型のもので、我が国では初の工事で、航空機の運航に特に安全性に問題がないか、騒音問題が新たに発生しないか、管制、運用方法に問題はないか等、私は11月に見学の機会があるので、現管制官の意見も聴いて再考してみたい。(10月15日)


26.

 

今回のニッポン号はモロッコからイラクヘの飛行です。
1939年10月8日モロッコのカサブランカを出発し欧州に向った。
既に戦争が始まっていたので、ロンドン、ベルリンは中止し、スペインの上空に入り、セリビアに到着した。僅かの睡眠でローマに向かう。追い風により260キロの倍の速度で飛行したのではないか。(筆者注:時速500キロであればYS ll並)。

中尾機長は「全コースの1/3を残しているが日本はもうすぐだという気分になった」と。ローマでも歓待され、皇室や政府から激励電報が届いた。
12日、地中海を東に飛び、ロードス島(現ギリシャ)に向かう。バラの花とオリーブで有名な島だが、戦争中はイタリアの重要な飛行拠点であった。


13日には仏領だったシリア上空を飛び、英国が占拠するバスラ(現イラク)へ。出迎えなし。一行の願いはゆっくり温泉で一ヵ月位過ごしたいというものであった。(10月15日)
27.

1939年10月14日、ニッポン号はイラクのバスラを出発しカラチ(現パキスタン)に2泊、16日朝離陸したが、黒い杉の大木のようなものが翼端をかすめるのを大原使節は窓から見て驚いた。中尾機長は「しまった、ダメだ」「助かった。ありがたい」と同時に危機一発をよろこんだ。そしてコルタカヘ向かった。
17日はタイのバンコクヘ。日本の夢を見たいと19日台北ヘ。温泉に入りぐっすり眠った20日6時50分台北発東京へ。途中桜島、機長の郷里山川から目を離さない。


紀伊半島で民謡「串本節」を頭に浮かべ、「日本の自然は瀬戸内海の魚に似て小味な奥ゆかしさがある。自ら完成した天の技巧である。」間もなく富士山を左に見て、佐藤通信士は忙しく眼下の風景を羽田に送る。そして13時47分群衆が見守る中東京着。
機長、使節など皆涙した。70年前の今日、ニッポン号は56日間かけて5万2860キロの世界一周をなしとげたのである。(10月20日)
 

(筆者注)この大毎のニッポン号の記録は、毎週一回7−8回にわたり連載されたものだが、同社の論説委員玉木氏は「冒険のみずみずしさ」と題して次のように述べている。

「機長中尾氏が丁度ライト兄弟の初飛行(1903年)に生まれたのは象徴的である。彼は体系的な操縦教育を受けた第1世代の人物である。次々に開発される試作機のテスト飛行を繰り返してきた人である。だが時代は日中戦争をはじめ、世界戦争の中で、新聞社の航空機も徴用され、遂に敗戦。日本は翼を失ったが時代は移る。再び国産旅客機開発に力を注ぎ、宇宙開発にも参画している。70年前、当時の技術で最後の「空の大冒険」をなし遂げたチャレンジ精神が、みずみずしいヒントや励ましを今に発信してくるのではないか」と結んでいる。(10月20日)

28. 10月22日をもって成田のB滑走路が2500mの長さで運用を開始した。今まで地元との話し合いがつかず2180mで使用しているものを320m延伸したのである。これによって 年間2万回の発着増となる。この3月に米フェデラル.エクスプレス社の機が各座しA滑走路が長時間使用不能となったことから、来年3月オープンを5カ月繰り上げたものである。また、成田新高速鉄道も来年7月開業予定で空港アクセスも良くなる。(10月22日)
29.

国交省の「羽田を日本のハブ空港にするJという発言から、いろいろな問題が出たが私見を述べさせてもらう。

まず、成田のBラン延長で発着回数は1割増えて22万回となる。同じく羽田のDランが出来れば44万7千回となる。これらは机上の計算であって、需要予測は時の経済状況如 何によるところが多く、最も困難な作業である。マイナス要因として、羽田のDランについては新たな騒音問題が、特に千葉県あたりに起こらないか?DランはBランに平行しているが、今のBランでも騒音の他に、川崎市上空を飛行しない制度があり、これは原子力企業があるので、万一を考えてBラン使用は北向き出発、着陸は北からのみという制約がある。

乗降客の増減は時の経済状況により、経済の好不況の変動は、20年周期又は40年周期と学説はさまざまである。良い例が名古屋国際空港で、なるほど中部工業地帯のおかげで、開港翌年までは順調であったが、昨年から今年にかけては予想を裏切った。
 更に、最も重要な安全問題である。我が国はじめてのDランに桟橋式構造をとり入れたが、フロート式も安全上まだ全く出現してない状況であるから、充分チェックのうえ、運用を開始してもらいたい。(10月30日)

30.

今度こそ甘えは許されない。唯一の国際線を運航した日本航空は「ナショナルフラグキャリアー」(国を代表する航空会社)として、事実上公的管理下で再建を目指さねばならない。

今までの再生案は3大銀行を中心とした3千億円の債券放棄と株式化を内容としたが、政府保証も加わるにあたり、財務相は「良識ある世論が納得できる案が出来て、初めて政府支援ができる」とし、年金問題の解決が支援の前提だとクギを刺した。また多くの負採算路線は、地方の求めに応じて空港を乱立させ、空港と航空路線を巡る政治と航空行政と地方の3者が追い詰めたことも事実である。

そこで年金問題だが、生活に直接影響が出るOBが引下げに応ずる公算は小さい。手続きの条件緩和など特例規定が検討されるとみられる。 日航には8つの労組がある。これらの整理、統合と現経営陣の刷新も避けられないと思われるが、時間を要するので、その間の安全運航に万全を期して貰いたい。(11月 1日)/p>

31.

ニッポン号が世界一周飛行を果してから今年で70年。その後敗戦により航空機の開発が禁止されて「空白の7年」の後、国産初の旅客機「YS-11」が出現したが、航空産業者は一様に「あの空白の7年が今も尾を引いている」とそろって口にする。「YS-11」は、三菱、富士、川崎、各重工、新明和から名うての設計者が揃って期待を背負って製作した名機であった。しかし、販売がふるわず182機で生産を終了した。

しかしながら、70年代、米国ボーイング767、777の共同開発で実績を重ね、次世代主力機の787は約35%が日本企業によるものであり、国産ジェット旅客機への素地は整っていた。三菱が2012年に初飛行を目指す「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の開発に乗り出したのは、経済産業省が03年に打ち出した「環境適応型高性能小型航空機」の研究開発に対する支援がきっかけであった。当初30〜50席を想定したが、アジア市場の需要が見込まれたので、70席、90席クラスに計画変更した。
リージョナルジェット分野では、カナダ、ブラジルさらに中国、ロシアが参入しているが、三菱は「最先端の技術による軽量化と空力設計、新エンジンの導入で2〜3割の燃費改善を実現させる」ことで、既に全日空から25機の購入希望があり、かつ米国の民間航空会社から100機の購入が決まったそうである。

世界一周を果たしたニッポン号からYS-11、次世代の中小型ジェット機MRJへ、日本の航空技術は進化を重ねて次世代へつながっている。(11月2日)

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第43号 平成21年6月1日発行

「民間航空界の動き」


顧間 久保 俊郎

 

1.いささか旧聞にぞくするが、建築学を専門とする東大教授が、オリンピックが終わった11月に北京を訪れ、空港ビルを見学した。
空港ビルがT1、T2、T3と3個もあり、各々が100メートルの縦長ビルで、各ビルの間隔が一駅分あるというから、羽田や成田のビルを更に大きくしたようなものらしい。
オリンピック終了後は、見学者用として開放し、一か所200円の入場料をとるらしい。それでも一日10万人位の観客があるらしい。ただ最も感心したのは、日本では騒音その他で空港一つ造るのに民意が応ぜず、海上とか市街地から離れた場所しか選定できないが、都市計画が自由に出来るところだ。市民の権利が強くなる前の、理想的な都市インフラを整備できる最後のチャンスであったことで、ナポレオンが古いパリの街並みを焼き払って、ゼロから都市計画を力づくで進めた事例とダブッて見えた由。中国はオリンピックを契機としてそのチャンスを最大限にいかしたのだろう。(12月1日)
2.羽田空港国際化は以前から東京、千葉、神奈川の間で分科会を開いて討議している。
2010年に羽田に第4滑走路"D"が出来、現在の韓国、上海、香港線を深夜、早朝に3万回の国際線割当を計っている。10年10月以降はマレーシア、シンガポールのほか、英仏への直行便もできる。深夜便に対する旅客輸送は、鉄道に代わるバス運行が羽田−品川−横浜間に続けられる。さて今後の問題は、昼間の国際線問題をどこまで拡げるかであり、国は「国内線の需要問題で変わりえる」と説明している。また成田空港と都心及び羽田を結ぶ鉄道輸送の高速化も動きだしているそうだ。
羽田の国際線と国内線の配分は、日本の交通体系全体を見直す中で考える必要があると思われる。(12月2日)
3.医師が乗り込んで救急現場に直行するヘリコプターをドクターヘリという。救急車に医師が乗り込み、患者搬送途中でも治療ができるので、平均14分で救急要請から治療開始まで、救急車の場合の半分の時間で済むという。ただし、運航費が年間1億7000万円かかるのと、片道70キロまでとされ、まだ全国に15機のみの運航という。(12月6日)
4.2005年の愛知万博と期を同じくして、中部国際空港が世界のトヨタなど大企業の支援もあって、近時最もめぐまれた空港として発足した。
ところが、原油の高騰に続く米国経済の減速と金融バブルの崩壊、急激な円高、ドル安加えて中国、インドなどの激しい経済グローバル競争などで、空港の乗降客、特に国際線は、流石に名古屋といえども今年は前年比7割と落ち込んだ。日本の多くの産業は輸出依存型で、円高は景気を後退させる要因となる。過去にもオイルショックや円高ショックでもバブル崩壊の危機を乗り切ってきた日本だが、その根底には技術力に裏付けされたモノ作りの「精神」があったのだ。航空機も絶大な技術力で、三菱重工、川崎重工、富士重工が伊勢湾沿いに工場を持ち、MRJ(三菱)が座席100以下の小型機で、国産ではYS-11以来35年ぶりに新型機による輸送をはじめ、航空界の刷新を図らんとしているのである。(12月10日)
5.飛行機から出る二酸化炭素(CO2)の規制は、いままで国内線についてのみ検討されてきた。こんどは国際線についても国際民間航空機関(ICAO)が来年中に対策をまとめる機運が出て、経済成長著しい中国やインドなどに乗り入れる便の増加などで伸びつづけ2005年は1995年の1.5倍の数値(6億トン)のCO2が示された。
国交省も来年1月、東京で開催される「交通分野の地球環境エネルギーに関する大臣会合」でICAOの考えを後押しする構えであるという。私共が知ったのは、着陸の際のスピードを落とす逆噴射1回に使用する燃料は約60リットル以上になり、排出するCO2は140キロで、車と比較すると500キロ走ったものに相当するという。
「滑走路が長くて乾いていれば、アイドル状態で安全に止められる」という。ただ、最も効果があるのは機種の変更で、B747からB777にすれば、排出量は2/3ほどに減るという。日本の各社が来年導入する787はさらに削減される由。また、コンテナや食器類の軽量化なども燃費を下げ、国内、国際線の旅客便で同じ距離を飛んだときの一座席当たりのCO2排出量を、07年度に90年度より13%減、当初日標の10%をクリアーしたというから、我々の知らぬところで、いろいろな努力がなされていることがわかる。(12月10日)
6.羽田から関西、九州、ソウルなど西方に飛ぶ旅客機が、横田の空域南部の一部を飛ぶことが出来れば、時間の短縮と燃料の節約に大いに役立つという石原知事の発言で、米軍と話し合いの結果、この9月末から実施可能になった。
旅客機の運航には大変好ましいことだが、大田区、世田谷区の一部住民から、騒音苦情が出た。羽田はこの20年ばかりの間に、東へ、東へと移動し、かって品川区勝島あたりの住民の苦情がようやく無くなった今、再びの騒音問題である。大田区の要望書では「空域と空港が共生できる」街を目指しているので、早く解決することがのぞまれると。(12月15日)
7.中部国際空港が寂しい年の瀬を迎えている。
日本経済の象徴である自動車産業までが悲鳴を上げる世界同時不況のあおりで、自動車牛産工場の地器である東海地方で働く日系ブラジル人派遣社員の多くは解雇され、やむなくドバイ経由で故国へ帰って行くという。米国経由が便利だが、米国ではビサが必要になったため、やむなく中東廻りとなった。(12月29日)
8.新年早々「羽田空港国際化へ飛躍の年」と案の定、羽田空港問題が新聞に大きくとりあ げられた。問題は'D"ランウェイが出来れば年間の発着枠が今より10万回以上増える。
中でも国際線は現在の9000回から6万回へと6〜7倍に拡大する・・・といったもので羽田は既に国際化する空港だとする意見が多い。
羽田は現在、国内線のみで年間6500万人を運んでおり、これは我が国総人口の半分を占める数である。成田の滑走路の増設が不可能で、早朝夜間の飛行が住民の反対で出来ないものであるなら、それをある程度埋めるというのが理解できる意見である。
成長著しい中国、韓国などアジア諸国の空港と伍して行くためというが、今は大きな空港を造るというより、成田と羽田が「すみ分け」ではなく「補完」すべき時代(東京都副知事)というのが妥当だろう。そのためには両空港を結ぶアクセスを真剣にとりあげるべきで、神奈川、千葉県民の利便等のためのみの議論をすべきときではない。(1月4 日)
9.国内定期便のうち乗降客は羽田便が突出して多い。即ち
1)羽田〜千歳(札幌)972万人6)羽田〜鹿児島 225万人
2)羽田〜福岡 8147)羽田〜熊本 188
3)羽田〜大阪(伊丹)5838)羽田〜小松(金沢)185
4)羽田〜那覇 5379)羽田〜関西 170
5)羽田〜広島 23210)羽田〜長崎 149

以上は2007年度の実績であり、羽田利用者は4204万人で、総利用者6500万人の65%を占める。
地方空港が如何に羽田路線を多客便として狙っているかが判明する。羽田が拡張を必要とされる理由である。ただし、500km以上の距離がないと、航空便は他の機関(鉄道など)にとって替えられる。(1月11日)

10.1月15日、15時30分 アメリカのUSエアウェイズのA320型機が客150名を乗せて、ニューヨーク ラガーデア空港を出発直後、バードストライクによって両エンジンを破損900mの高度からマンハッタンの西を流れるハドソン川に不時着した。幸い全員無事、先ず機長の判断が良かったこと、着水直後、沿岸警備隊や多数の船舶が救助に参加したことが幸運であった。救助に要した時間は約1時間であった。
ニューヨーク州知事は「ハドソン川の奇跡」と賞賛した。鳥衝突による航空機事故は乗客が死亡したものだけでも近時世界で数件あるが、我が国特に羽田では航空保安協会の職員10数名で、銃をもって昼夜を問わず、有害鳥の駆除にあたっているが、羽田(標高2メートル)ほど鳥のエサにめぐまれ、また”渡り鳥”に都合のよい休憩所はない。防除の最良の手段は空港からエサをなくすこと以外にないと言ってよい。またそれ以外に方法はない。(1月16日)
11.日航、全日空ともに景気低迷に伴う出張、観光客の減少により、関西、中部国際空港を中心に計30路線で休止、減便を決定した。
昨春は原油価格の高騰によるものであったが、今回は景気の不振によるものであり、関西が特に観光の不振が目立つ。順次小型機が使用され、客室乗務員も減少され、景気が上昇しない限りさらに減便となる可能性もある。
12. 路線減少が続く関西国際空港を支援するため、国土交通省は海外航空会社に対し、関空発着便に限って国内路線の運航を、日本の航空会社との共同運航(コードシェア)を義務付けて認める方針を固めた。
 海外の航空会社にはこのことについて前向きな姿勢を示す会社もあるという。

関空に降り立つ外国人旅行客には、北海道を目的にした人も多い。今回の場合、国内線部分のチケットは、海外航空会社から座席を仕入れた国内航空会社が販売する。

関空の国内線は日航と全日空で、96年10月に84便あったものが、この4月には45便に減る。関空会社の村山社長は「これでは国際拠点空港としての役割を果たせない。アジアの元気な会社に国内線をお願いしたい」と話している。(2月2日)

13.
航空大手の収益が急降下している。日本航空と全日空は2月6日までに9年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、純損失に転ずる見通じとなった。旅客も貨物も需要が激減し、日航は純損失が34億円になり公的融資の申請検討を示唆した。よって人員削減と路線の運休等を考えたが、こういった大幅な均衡縮小には踏み切り難い。最大の稼ぎどころである成田、羽田の両空港では、10年に再拡張が完成し、当面は苦しくても発着枠を確保しておいた方が、中長期的に有利という考え方があり、難しい判断を問われている。(2月7日)
14.現地時間で2月12日午後10時過ぎ、アメリカニューヨーク州、ニューアーク空港に着陸前、コンチネンタル航空所属のボンバルデアDHC8Q400型(プロペラ双発機)が、爆発墜落し、乗員乗客49名、地上の住民1名計50名が死亡した。
同機は着陸のため、高度700メートルまで降下したところで主翼の着氷を知ったが、解氷装置が作動せず、フラップが全く効かなかったという。
同機種は近距離用小型機(70〜80名搭乗)で、我が国でも25機がローカル線に使用され1昨年3月高知空港で前輪が出ず、胴体着陸した。国土交通省では同機が特にトラブルが多いわけではないと結論づけているが、他山の石である。(2月15日)
15.「ハドソン川の奇跡」と呼ばれたベテラン機長が米議会で気になる証言をした。会社の経営難に経済意識が加わり、空の安全をまもるベテラン機長が次々に去り、リストラに脅かされているという。日々を無事故でつなぎ、英雄など生まれないことこそ誇るべき栄誉なのに、奇跡のあと、米国(NVIA)やオランダ(トルコ航空)で着陸事故が相次いで起こつている。合理化のあまり、必要な筋肉まで削いでいなかったかどうかが、気になるところである。(2月20日)
16.
22年秋には、羽田は”D”ランウェイの完成やら、国際線を含む増便などで、様変わりするが、管制塔も116メートル高のものが新設され、死角なしの空港管制が出来るという。
台湾便が1日4往復(8便)となるようだが、国際線が”D”ランウェイをスポットを使用するのにかなり長距離のタクシングをするようになり、効率は良くないと心配される。管制官も気配が、こんな心配をしなくて済むことを切に願っている。(2月27日)
17.

北朝鮮は4月4日から8日の間に、人工衛星「光明星2号」を運ぶロケット「銀河2号|を日本海に向けて発射し、1段目は日本海に、2段目は日本を超えて太平洋に落下既にICAO(国際民間航空条約)及びIMO(国際海洋機関)に安全に必要な資料を提出したというが、前のテポドンは通告なしに2回にわたり発射している。

今回も1段目は日露路線線に、2段目の落下地点について日米路線に計16便に影響があるので、迂回経路を検討中であるという。(3月13日)
18. 丸紅ロッキード事件から30年余、 2月から日本の空を飛び始めたブラジル製小型ジェット機が紹介された。 2月1日ブラジル・エンプラエル製小型機「E170]が名古屋空港から飛び立った。社長まで逮捕された丸紅にとっては「新しい歴史の一ページ」である同社の遠矢部長は「ロッキードは私の入社前の事件だが、丸紅にとっては十字架だったこんどの販売でやっと次のステップに進むことができる」と喜んでいる。
(注)ロッキード事件とは1976年、明るみに出た戦後最大の疑獄事件で、田中首相、丸紅、全日空の幹部16名が受託収賄、贈賄などで起訴され、丸紅の檜山社長等は、首相に5億円の資金提供をして有罪になった。(3月23日)
19. 「人工衛星の打ち上げ」を予告している北朝鮮は、 4月4日〜 8日1100〜1600(日本時間)に同国が管理している空域の二つの航空路の一部を閉鎖するとの航空情報(ノータム)を発出した。該地区は北朝鮮の東側沿岸上空と、沿岸から東の海上に向かう各航空路の一部で、日本を発着する航空機は利用しておらず、日本への影響はないという。(3月24日)
20. 3月23日午前6時30分頃、成田空港のA滑走路で、中国宏州発の定期貨物便フェデックス80便MD11型が着陸に失敗し、炎上した。米国籍の機長と副操縦士の2名が死亡。当時空港周辺は瞬間風速20メートルの風が吹き、風向風速が急激に変わる「ウインドシア」によるものとされる。
(注)ウインドシア(Wind shear)乱気流の一種で、風向風速に急激な差が起きる状態を指す。シアとは「ずれ」といった意味。
テレビで見る限り、着陸に際しての機体のバウンドが異常で、運輸安全委員会では23日FDX機が滑走路にいったん接地した後に、操縦桿の操作のタイミングがずれて、機体が上下動を繰り返して制御困難になる「ポーポイズ」と呼ばれる現象に陥った可能性がある、との見方を示した。ポーポイズはイルカのように進むという意味。機体の弾みが拡大し、地上から浮かんでは落ちるさまが、イルカが海面をはねる姿と似ているためこう呼ばれる。

事故によリー本しかない国際線用滑走路が閉鎖され、当日は約140便が発着を見合せ、A滑走路の閉鎖は数日続くと言われたが、日本の主たる国際空港のあり方がこれでよいのか不安を持ったことである。(3月25日)

21. 前記3月31日付き17項で述べた北朝鮮が通告した人工衛星の打ち上げは、 4月5日に発射された。日本政府はこれをミサイルと認定し、4月13日に期限が切れる北朝鮮船籍の入港全面禁止を1年延長するほか、同国に対する資金の流れを監視強化する決定をした。
このほか、国連安保理事会に対し、中止に関する強いメッセージを発するよう、申し入れているが、これは中国、ロシアの消極姿勢で、日本の意向は影のうすいものとなりつつある。
私は、安保理に申し込んだ時点で、日本の意見は通らないと案じていた。前大戦の勝利国(米、英、仏、露、中)の一国でも反対があれば、安保理の決定は不能となるのは過去にもその例があったからである。歴代の安保理々事長は、苦労を重ねているが、充分予測される事柄故である。(4月10日)
22. 北朝鮮のミサイル発射問題で、国連安全保障理事会は、13日午後(日本時間14日未明公式会合を開き、発射を非難する議長声明を採択し、再発射の自制を求めた。
これに対し北朝鮮は14日、外務省声明を出して核問題をめぐる6者協議には「絶対に参加しない」と脱退を表明した。
思い出せば第1次大戦後の国際連盟を日本が脱退し、昭和12年から支那事変、第2次大戦へと進んだが、このような事態が発生しないことを祈って止まない。(4月14日)
23.
飛行機は離着陸時に何故事故が多いか。この3日に成田で米貨物機が着陸失敗で乗員2名が亡くなった。1月は米ニューヨークで離陸直後エンジンに野鳥が入って壊れ、ハドソン川に着水した。離陸後3分と着陸前の8分は「魔の11分」といって、地表付近の気象。特に風が変わり易いし、野鳥も多い。操縦士の作業も多く、管制官との連絡も活発ゆえ、ヒューマンエラーも起き易い。 飛行中は速度、高度は十分で、エンジンが一発不調になっても降下の勢いを利用して、グライダーのように安全に降りることができるが、離着陸時にはその余裕がない風のほかにもアイシング(着氷)が翼の自由、変化を阻
害して事故を起こす。 (4月15日)
24. 神奈川、千葉の両県知事は、羽田、成田間をリニアモーターカーで結ぶ構想を発表した。用地買収を必要としない大深度地下を走り、約80キロの距離を時速300キロで走るという。両空港を一体的に運用し、首都圏空港の機能を強化するというが、建設費1兆3000億円と建設期間について未だ不明の点がある。よって新藤千葉大教授は「行政の長は事業主体や費用負担を明確にしてから提案すべき事柄である」といっている。(4月21日)
25. 今年をもって横浜港が米国ペリー氏の来航によって開港し、150周年を迎えた。当時横浜は一地方の寒村であったが、米国の要望する東京に近いということ、かつ海底が深いので、大型船も使用できることでようやく妥協し、200余年にわたる幕府の鎖国政策(通商、交通を禁止すること)が解除され、今日の盛況をみることとなった。
また横浜(神奈川県)は東京に近いこともあって、羽田の国際化に熱心で、海空ともに国際都市への発展を目指している。(4月25日)
26. .2001年に開港した韓国仁川空港(ソウルの西約50キロ)は昨年3本目の滑走路の完成で、旅客4400万人、貨物450万トンと大幅に延び、国際空港評議会で「世界最優秀空港賞」に選ばれた。また10年後に4本目の滑走路が出来て整備されれば、成田の5倍ほどの面積となり、年間旅客1億人、貨物量700万トンとなる。出入国手続きのスピードアップとハイテク化により「北東アジアの物流ハブ港」を目指している。着陸料が成田の1/4の25万円、貨物も旅客も仁川経由(乗換え)が「安くて便利」という評判である。(5月1日)
27. .機内でインフル感染が疑われる乗客が出たらどうするか。先ず出来るだけ後部の座席に移し、前後2席を空席にする。 トイレも他の乗客と別にし、検診まで専属の客室乗務員をあて、他の乗客に一切接触させない。たの乗客にはマスクを配付し、手洗い、うがいの徹底を促す。疑いのある乗客には検疫の質問項目に沿って体調をチェックし、渡航先や期間を尋ね、この情報を機長は無線で地上の担当者に連絡し、検査をスムースにさせるという。これには他の乗客の協力も必要だが、乗務員の努力は並々ならぬものがある。(5月 3日)
28.
新着陸方式が、騒音と排出ガスの減少に役立つという。
従来は最終進入にあたり、降下と水平飛行を繰り返しながら段階的に高度を下げていたが、新方式は上空で推力を最小限に絞り、グライダーのようになだらかに降下する。(左図参照)
これによってCO2(二酸化炭素)の排出削減3%zと、空港付近の騒音の軽減に役立つという。当面は関西空港で試行する。(5月 6日)

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第42号 平成20年12月1日発行

「民間航空界の動き」

顧間 久保 俊郎

 

1. 6月15日午後、離陸に向け移動中の日本航空のジャンボ機の左翼先端が、滑走路手前で待機中の全日空機の尾部に接触するという事故が羽田で起こった。両機はそのまま離陸、目的地到着後の点検で接触に気付いた。けが人はなかった。互いに大型機、日航は「全日空機との間隔が狭いと考えたので、センターラインより右側を通った」という。大阪に到着した全日空機は点検で、尾部の下に45×30cmのへこみを発見、日航機は那覇に着後、左翼先端にあるライトのカバーが壊れていた。
全日空機の待機は、停止線に従ったものと思われるが、事実日航機の左翼端が触れたということは、空港管理上初歩的なミスと考えられる。(6月13日)
2. 東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸に経済の一体化が進む東南アジアでは、航空自由化が進み、2000年以降格安航空として、マレーシア航空あたりが平成22年開港の茨城空港を狙っている。同社は既に、豪州、中国、韓国へも乗り入れており、運賃は大手会社の4割近く安く、シンガポールーバンコクなど片道数百円という。内容は食事、飲み物サービスなし、各国が観光などに役立てるため、低賃料のターミナルを開業するなど、支援を行っている。日本へも、成田、中部、関西を除く国際線乗り入れ可能な地方空港もターゲットとされ、日本の空模様も大きく変わりそうだ。(6月14日)
3. 原油価格の高騰で、格安航空戦に敗れ、経営破綻に追いこまれた航空会社が、欧州特に英国に現れた。シルバージェットは7年1月全ビジネスクラスでルートン・ニューヨーク、アラブのドバイを結んでいたが、急に閉鎖された。やはり原因は原油高でコストがかかり過ぎるということだ。
4. 燃料高騰による航空運賃の値上げが続く中、路線によっては値引き競争も起きている。旭山動物園の人気で観光客が増える旭川空港、普通運賃は4万円だが事前購入者向けは2万5200円。ところがスカイマークが5月まで1万円、エアドウも同調して1万円をきる設定にした。日航も2万3000円にまで下げたがスカイマークには及ばない。「単価と搭乗者数のかけ算の答えを最大化する」という運賃担当者の課題はますます難間になっている。(6月20日)
5. 全日空と日本通運などが設立した航空貨物「オールエクスプレス」の初荷が2日未明羽田から上海、香港に向かった。東京から夜8時までに書類などを出せば、翌朝海外に届く。「オールエクスプレス」は秋にはタイと台湾、来年は中国北部や韓国、ベトナム行きの荷物も扱う。(7月3日)
6. 燃費の高騰が収益を圧迫することから大手2社は採算性の低い地方路線の廃止、減便処置を地元と調整する。対象は関空と北海道、東北、四国、九州路線で、全日空は燃料市況がこの1年で2倍に上がり、運賃値上げやコストを削減しても路線維持が困難になった為という。日航も関空線にとどまらず、「幅広い範囲で地方路線の廃止、減便を検討していく」という。(7月5日)
7. 全日空は欧米路線に大型機の使用を考えていたが、B787の納入が再三遅れているためA380の燃費効率の良さからこちらに切り替える方針という。(7月5日)
8. 「指紋確認」などテロ対策に自動化ゲートを昨秋から成田で始めたが、法務省は来年度から羽田、中部国際、関西国際でも実施する。自動化ゲートは利用者が事前に登録した指紋を機械で読み取って本人を確認する。時間短縮の特点がある。(7月6日)
9. 羽田に建設予定の国際線貨物ターミナル屋上に太陽光パネルを敷き、電力を賄う計画があり、出力2メガワットで関東地区では太陽光発電施設としては最大という。民間資本を活用するPFI事業として三井物産が建設運営し、来る10年に稼働する。屋上部分2万1千uに10億円をかけ、年中無休で24時間稼働するターミナルの電力使用量の約1割を賄う。環境意識の高まりにも一役買うだろう。(7月8日)
10. 燃費の高騰で、減便や路線廃止については再三述べたが、5年2月に開業した中部国際空港に限っては、トヨタ等地元企業のバックアップもあり、需要が下降することは無いだろうとの大方の見方があったが、初年度は愛知万博の影響もあり好スタートをきったが、祭りが終わると需要は下降線をたどり、燃費の高騰には勝てず、米国によるハワイ便、サンフランシスコ便が減便または廃止、カンタスのオーストラリア便も姿を消す。貨物便も厳しく大幅減便、これらは単に燃料高騰のみならず、成田、羽田に加え関空の第2滑走路の供用開始も関わっている。よって当事者は深夜便の開始、着陸料は大型機について2割安、更に24時間化、2本目の滑走路建設とアイデアはたくさんある。中部国際空港は地元経済界積年の悲願であった故、まずは需要の新規開発による活性化が大事な問題ではなかろうか。(7月16日)
11. 国は各地の空港を拠点とした地域振興を助成する交付金制度を来年度から創設する方針を固めた。地方公共団体が負担する事業費の半額を助成するのは、国が国内空港の新たな建設は終了し、今後は有効活用など運営面の対策が重要になると判断したためである。「空港地域活性化協議会」(仮称)により、空港の利便性の向上や周辺地域の振興に関する計画を立ててもらう。「空港周辺での緑の空間整備」「アウトレットモール、温浴施設などの誘致」「深夜貨物便の運航など物流強化による地元産品のブランド化」などソフト、ハード両面での振興策を盛り込む。「空港ごとに個性あふれる地域振興策が期待できる」としている。平成21年3月開港予定の静岡空港をもって、国内空港の建設は終わり、今後メンテナンスや有効活用などに重点を移す。(7月25日)
12. 空前のジェット燃料の高騰により、航空各社は国内線の大幅減便、廃止方針、小型機への切り替えや不採算路線の廃止、サービス簡素化などで運賃を下げて対抗している。しかしこのため機長など乗務員の給与も引下げたところもあり、これによる安全にからむトラブルが起こっている。一方空港側はどうか。現在旅客機が使用する空港は97あり、来年には静岡、茨城が開港し代わりに福島空港は撤退する。静岡、福島はいずれも「羽田、成田に次ぐ首都圏第3空港」を合言葉に地元が誘致した。しかし福島は採算がとれないのである。理由は他に運賃の安い交通機関がある故である。(8月1日)
13. 「フライ&クルーズ」という旅行形態が人気を呼んでいる。海外の都市に航空機で飛び、その後豪華客船で数ケ国を旅する(飛んで船旅)することによって短期間で数ケ国を廻り、料金も安い手軽さがうけている。航空機でローマに飛び、あと客船でアテネ、カイロなど地中海の周辺都市を廻る13泊、14日間の旅(一人34万円)など退職を迎えた団塊世代に人気があるという。また香港から客船でベトナムの古都ダナンなどに寄港する6泊7日の旅は13万弱という(8月24日)
14. 羽田の第4滑走路の運用開始に向けて、2010年には神奈川県知事、横浜市長等が、羽田を是非国際空港として使用したいと熱望している。国と千葉県は、成田を建設した由来があるので、この件に関しては消極的であるが、時が経つにつれて、近距離(東南アジア各国)線の国際線使用が始まる気配がある。国際空港としての空港の運用には、管制官をはじめ税関、入管、検疫の専問員の配置が必要で、税関では現50名を7倍の350名に増員するという。さらに海辺に存在する羽田は有害鳥の繁殖には絶好の地であり、地どり、わたりがジェット機の轟音にも負けずにエサあさりに増えるであろうから、これらの駆除要員の増加も必要となるであろう。(9月30日)
15. 観光庁の発足を機に国土交通省は、増えている訪日外国人に対し、名所、旧跡巡りにとどまらない「産業観光」をすすめて、中小企業振興の観点を強調する。視察ルートの開発では、ビジネスマンのニーズに応えていくという。中部国際空港の開港の際は、トヨタ、三菱がこういった計画にはいったが、他空港でこのような波にのれれば良いが--(10月3日)
16. ビジネス用小型ジェット機の開発が盛んだ。原油の高騰対策と運航面、使用空港の小型に便利なことが需要を増している。ホンダは10年に「ホンダジェット」を量産の予定、さらに富士重工業は8人乗り「スバルジェット」と称して、全長17メートル、幅15メートル、一回の給油で日本から中国大陸まで飛べる想定という。15年頃の実用化を目指している。(10月4日)
17. 日系移民100周年を記念して、ブラジルの「エンブラエル社」製の中型ジェット機を日本航空が導入することになった。同機は機種を「E170」と称し76席で来年2月から名古屋(小牧)−福岡、名古屋−松山に就航予定で、燃費効率が良く、日航は来年から10年度末までに10機を導入し、地方都市を結ぶ路線に使用する。(10月5日)
18. 空港〜都心間のアクセスは殆どの空港で時間がかかり過ぎ、悩みの種だが、今工事中の成田〜羽田間の成田新高速鉄道(2010年完成予定)は北総線、京成線、都営浅草線、京浜急行線に東京を含むバイパス線(図面参照)をもうけ、東京〜成田間を結ぶ計画を検討している。これを利用すると、東京〜成田間を30分以内、羽田〜成田間を1時間以内で結ぶという。工事費は3千億円以上がみこまれるので、新線に参加する私鉄会社にも出資を求め、地権者に金銭的保障が不要になる「大深度地下」を利用し早期着工を目指す。(10月7日)
19. 国は成田、羽田両国際空港の運営について、外資が多く入ると安全上好ましくないとの観点から、これを規制する(1/3)方針であった。しかし、去る9日「空港インフラ(社会資本)の規制のあり方に関する研究会」において、「資本規制は、資本の内外差別をしないことを前提に検討する」ことが了承された。国は、当初外資による経営支配が安全を損ない、施設整備の遅れにつながるとの意向から、成田空港会社と羽田空港ビルについて、外資の保有率を1/3以下に規制する法改正を目指した。しかし、福田前首相の「市場開放を一層進める」との方針もあって、従来の規制方式が、株式市場のグローバル化に反することから、日本の閉鎖性を緩和することとなった。今後、前記「研究会」の意見などによつて、規制緩和、民営化が進むことになろう。なお、英国のヒースロー空港などはオランダの企業によって、94%もの資本形成がなされている。私の一番きになるのは安全問題である。(10月10日)
20. 三菱重工業が事業化を決めた国産小型ジェット機「MRJ(ミツビシ リージョナルジェット)を政府専用機として平成15年を目途に10機導入する。今回発表したものは三菱航空機として同重工業のほか、トヨタ自動車、三菱商事も出資したもので70〜96席、燃費2〜3割向上、客席の快適正、低騒音を目指し、今後20年間に1000機の受注を目込み、米国にも販売拠点を新設する。東京一香港など中短距離を結び、開発費約1500億のうち、経済産業省が約500億円を補助する。(10月17日)
21. 羽田の4本目の滑走路("D"ランウェイ)は空港南側の海上に計画され10年10月オープンを目指し、工事は着々進んでいる。この滑走路は空港南側であり、多摩川からの水流を妨げないよう、河口に近い部分は埋め立てず、高床式の浅橋型の構造となる。 (図面と写真参照) 工事が進む桟橋部分。奥は埋め立てられ、合わせて新滑走路となる=本社ヘリから、小林裕幸撮影すでに3分の1の設置を終え、人口の「島」の一部が姿を見せている。この新滑走路が完成すれば、羽田の年間発着回数は約30万回から40.7万回に増え、国際化の問題がいよいよ本格的に討議されることになるであろう。
22. 現在建設中の静岡空港(滑走路2500メートル)は基本工事はほぼ終了し、来年3月の開港待ちであったが航空機の安全発着に必要な制限表面(高さ制限)に邪魔な木が存在し、出来上がった滑走路をフル活用出来ないことが分かった。(図面参照) 滑走路端から約1400メートルにこの高さ制限を超える立木数十本が存在し、逆に滑走路の運用を縮めて使用する暫定運用方式を考え、新たな許可申請を行う。航空灯火や飛行場標識の位置変更工事、更に飛行検査を計画していた高さ制限立ち木(数十本)含むと開港は早くとも5月以降にずれ込む見通しとなった。2500メートルを使用する前提で、札幌、沖縄、ソウル線が就航予定されていた。(10月25日)
23. 燃料高で不振の航空会社に対し、総合商社がリースなどで、効率化を狙っている。三菱商事や住友商事が保有する航空機を航空会社に貸し出す事業を拡大し、自前の整備士も加えて付加価値を高める。伊藤商事は仏ATR社のプロペラ機の販売を強化するため、東京、兵庫、新潟で誌乗会を開き、丸紅は航空会社の小型機志向に乗じ、70〜 100人乗りのジェットを日本航空に初納入する。今後民営化が進むとみられる空港のビジネスにも関心を示し、三菱は荷物の積み込みや航空機の給油などの支援業務を行う会社を中部空港に設立。地方空港のターミナルビルの運営も、上記商社が検討している。(10月29日)

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第41号 平成20年6月1日発行

「民間航空界の動き」

顧間 久保 俊郎

 

1. 空港整備法の改正で、成田や羽田の外資規制が、来年度にも実施されるという。空港ビルは商業施設ではあるが、単なるショッピングセンターではなく、滑走路や管制塔のみならず、入管、税関、検疫もある公共施設であるから国は外資枠を全体の30%におさえて、安全を確保したいということで、外国航空会社ともめているのである。国交省は年内にも結論を出すという。(2月27日)
2. 今、全国に97の空港があるが、うち46の地方空港は羽田の滑走路増設で期待を持っているが、地方路線は、新幹線や長距離バスに旅客を奪われ、航空会社も小型機を使用してこれに対抗しようとしている。しかし小型機による多頻度運航をしても採算は苦しいという。(3月17日)
3. 日本エアコミューター(株)は、病気で乗務できないパイロットが相次ぎ、便数制限を余儀なくされている。大阪発出雲、松山、福島計20便を3月末10日間欠航する。同社はパイロット72名中、5名が長期病欠中、 1人退職、更に2名が病気で欠航が増えた。機材繰りで欠航はあるが、人繰りで便数が減るのは珍しい。(3月21日)
4. 羽田の拡張で17年度から5カ年計画で、国に100億円無利子貸付を行っている横浜市は同市が主張する羽田は広く国際化すべきとの意見に対し、国は成田との関係もあり、1947kmまで(上海が入る程度)という主張に対し、横浜は融資を凍結する意見であり、神奈川県、川崎市もこれに同調する傾向にある羽田の国際化については横浜市長は、昨年から東南アジアの大半を含むことを主張していた。神奈川県民にとって羽田の国際化は利便性の大幅拡張であることは分かるが、新設1本の滑走路は国内線のみで、2、3年のうちに限度に達するであろうことは明らかである。(3月26日)
5. 三菱重工業(株)は、40年ぶりに「YS-11」以来の国産旅客機の事業化を図る。70〜90人乗りの小型ジェット機MRJで、一機あたり30〜40億円の価格で、燃費3割減、騒音半減を目指し、日航、全日空のみで70機の購入を調整している。(3月30日)
6. 4月1日から全日空は羽田−香港間に定期チャーター便を就航させる。これは国交省が目安とする国際定期便の運航距離(ペリメーター)1947kmを越え、同規則に風穴が開く。今後の双方の対応が注目される。(4月11日)
7. 中国が国産旅客機の開発にのり出した。先ず、90席級の小型ジェット機だが、今秋に初飛行し、すでに181機を受注しているという。小型旅客機は昨年あたりから注目され比較的近距離間を頻度多くフライトし、旅客の利便を図ろうとするもので、我が国では三菱重工が2011年を目標に、カナダ(ボンバルデイア)、プラジル(エンブラジル)がそれぞれ開発し、2400万ドルから3000万ドルの価格。中国製は将来ライバルとなるであろうが、欧米では「機体を引き渡したあとの維持、管理サービスの充実」が問題であるとしている。(4月6日)
8. 航空業界世界第3位のデルタ航空と、同6位のノースウェスト航空が合併する。この結果首位のアメリカン航空を追い抜き、世界最大の航空会社が誕生する。これは米景気の後退に伴う客数の低迷や、原油価格の高騰によるコスト高による経営環境の厳しさを増す中、両者は合併による経営の効率化で競争力を図るものである。 原油価格に危機感を高める航空業界の再編機運が高まっており、両者は成田空港を主要な収益拠点にするだけに、日本の航空会社にも脅威となる。日本−北米間で最大の運航規模をもち、成田を拠点にアジア路線網を展開している。よって将来的に外貨規制を含めた規制緩和が進めば、日本でも国境を超えた再編が起こる可能性もありうる。(4月15日)
9. 所沢航空発祥記念館で展示している国産戦闘機の胴体部分「九一式航空機々体資料」が日本航空協会の重要航空遺産の第一号に認定され、14日同協会の近藤会長から上田知事に認定証が手渡された。同機は400機以上生産されたうちの一機で、産業技術史上からも貴重であるという。遺産第一号には「YS-11輸送機量産初号機」も同時に認定された。(4月15日)
10. カツオ漁業で有名な鹿児島県枕崎空港は91年に設置されたが、離島と結ぶ定期便は飛んだことがない。地方から首都圏へ、世界へと全国に造られた空港は97カ所になるが、このうち14空港には定期便がない。今これらの空港を廃止するか議論になっているという。(4月15日)
11. 羽田空港に建設中のD滑走路(2500m)の3分の1が湾上に浮き上がる桟橋構造として初めて採用された。多摩川の流れをせき止めないようにするためで、海水による腐食を防ぐため、柱はステンレスで覆われ、滑走路の裏面はチタン製となっている。完成は平成22年10月予定で、年間発着能力は現在の30万回から40.7万口に増える。(4月16日)

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第40号 平成19年12月1日発行

「民間航空界の動き」

顧間 久保 俊郎

1. ボーイングと日本メーカーの関係が深まる一方であることは全号にも述べた。82年就航の中型機767では日本勢の担当比は15%、それが95年の大型機777では21%、今回の787では35%に達した。787の主翼を担当した三菱重工業が初出荷したのは5月14日、中部国際空港からであった。(5月15日)
2. 米国と欧州連合(EU)は「空の自由協定」とも呼ばれる「オープンスカイ協定」を締結した。これは、便数、発着空港、航空会社数の制約が無くなることで、民間会社が自由に路線を設定できるようになる。 アジアでもこの方向に進んでいるが、日本は成田への乗り入れが枠不足のため、40カ国が希望を果たせないでいる。(5月16日)
3. 全日空は国際貨物輸送の拠点を、中部から関西に移す。これは8月にオープンする関西の第2滑走路(4000)メートル)が24時間使用できるからである。(6月15日)
4. 1970年に一時大量高速輸送時代に入ったが、21世紀に入り、イラク戦争などによる燃料の高騰と、ビジネスの発展で小回りのきく中小型ジェット機の生産に熱がはいりはじめた。三菱(日本)、ボンバルデイア(カナダ)、エンブラエル(プラジル)は、いずれも座席数100〜150前後で、航続距離3200km程度、速度マッハ0.80位で6月18日からのパリ航空ショーで模型が「お披露目」されたそうである。(6月18日)
5. 航空事故の予兆をつかむ「事故予知」に取り組むため、航空局は専門委員会を設置する。 航空工学や業界の専間家6人で7月2日に最初の委員会を開く。小さなトラブルの重なりが大事故につながるとし、情報を収集して「事故の芽」を見つけて予知するなかで、専門家に分析や助言を求めるという。(6月19日)
6. 羽田と中国上海に近い虹橋(ホーチヤオ)空港を結ぶチャーター便が秋にも就航する。 成田−上海便に比べ、2時間の節約になり、日帰り出張圏に入ることになる。上海は中国経済の中心として多くの日本企業にとっても有利となり、往来が一段と活発になりそうだ。(6月19日)
7. シベリア上空の通過料が13年末までに撤廃されることが、日口両国により合意されたと両政府が発表した。これにより日航、全日空、日本貨物航空の全便が今後年間50億円の通過料軽減ということになる。これによって日本の航空会社のシベリア上空通過枠を約3割増の週140便にするという。(6月26日)
8. 全日空は09年から那覇空港をアジア向け航空貨物事業の拠点(ハブ)にする。日本とアジアを行き交う貨物を、一旦那覇に集め、まとめて目的地に送ることで効率化を図る。 羽田、関西のほか、ソウル、北京を結ぶ貨物専用の那覇路線を開設し、専用機を4機から10機に増やし、毎日運行する。(7月6日)
9. 日本航空は貨物機の小型化を進め、7月3日に中型機B767貨物機を導入し、来年度中に3機増やしてフットワークを軽くする。成田−上海便に加え、成田−中部−天津−成田便など週36便に増加する。ジャカルタ、青島など小量の需要の路線を飛ばすことができるため、来年までに計4機を導入する。(7月4日)
10. 全日空は来年08年から導入するB787に温水洗浄便座(ウオッシュレット)を備える。 「787」は機体が軽く、燃費も20%削減できる見込みで、温水洗浄器を付けても吸収できると判断し、空の上でもお尻快適を宣伝している。(7月7日)
11. 羽田の場外(C滑走路の北延長上)に野犬が数匹住んでおり対策が考えられている。野鳥が航空機の発着に障害になるので駆除作業を行っているが、この野犬は空港の場外ながら極く近辺で、潮の加減で、消波プロックに上がったり、潮が引くと砂浜に出ている。この調子だと餌を求めて何時場内に侵入してくるか分からず、空港当局、空港署水上警察署3者で話し合って対策を考えているという。(7月9日)
12. B787(ドリーム・ライナー)は客席数200〜300の中型機で、東レが供給する炭素繊維複合材を機体重量比50%使用することで機体の重量比と燃費向上(20%)に成功した。三菱重工が主翼、川崎重工、富士重工の参加により全体の35%を上記3社が製造に加わり全日空が50機、日航が35機を発注した。いずれも中国便など近距離国際線での運用を行なう方針である。(7月10日)
13. ジェット機の歴史については、2次大戦前にまずドイツの研究が最も盛んで、大戦にドイツが敗れたあと、米国、ソ連、英国がベルリンに集まりリポートを奪い合ったという。ジェット旅客機の実用化は、英国デハビランド社の「コメット」が最初で、ロンドンと南アフリカを結んで飛んだ。54年に気圧の変化による金属疲労で2度の空中爆発のため製造を中止した。その間、ソ連、フランス、米国が開発に力を入れ、58年10月にコメットが再開発され、ロンドンーニューヨーク間に就航し、その3週間後にパンアメリカン社が「B707]を、60年8月には東京−シスコ線に「DC 8」を日航が導入した。(7月16日)
14. 6月に成田空港(株)社長を退任した黒野氏は、成田と羽田の国際線共用について、従来の、羽田は近距離アジア線を受け持つという一般論に対し、もう一歩進んで協調して双方が国際線を共用してよい旨発言した。要は、成田がもっと容量を増やすことだと強調した。(7月18日)
15. 関西国際空港の第2滑走路(4000m)が8月2日にオープンする。これは成田に次いで2本目の大きなものであるが、もう一つ世間の注目を浴びないのは、伊丹、神戸に比べて空港アクセスに問題があるのではないか。幸い24時間使用できるものであれば、貨物に重点を置いて中国のみならず、大型機で全世界を相手にして活用してはどうだろうか。(7月28日)
16. パイロット分野での団塊世代の一時大量退職に対処するため、法政大学と東海大学が航空機操縦学専修部を設け、パイロット養成に参入する。定員はいずれも30名程度で、学部4年、大学院2年で、各1150万円、1400万円を要する。また桜美林大学も航空大学と日航の支援により8年度から4年制のフライト・マネジメントコースを開設する。(8月3日)
17. 8月20日、台北から那覇に到着した中華航空のB737の火災事故は、幸い、乗員、乗客165名は機体を離れたあとの火災で、人命をとりとめた。しかし、機長や乗務員の誘導接客態度は、彼等のいう完全なものではなく、乗客扱いについて一考を要するものがあったようだ。(8月21日)
18. 空港整備の費用につては、国際空港(1種)については国が100%、国内主要空港(2種)については国70%、地方(県)が30%を受持ち、その他の空港(3種)については国50%、地方50%をそれぞれ受け持つ空港整備法がある。しかし、国際線を持たぬ大阪(伊丹)空港問題や、国が設置して地方が管理する青森空港(3種)の取扱い方法が不明確なため、近く分類方法を変更し、費用負担の方法を見直す方針である。来年の通常国会で改正法案が提出される予定である。(8月25日)
19. 中華航空機の事故は94年に名古屋空港(当時)で着陸の際墜落し、96年には福岡空港でガルーダ・インドネシア航空の事故があった。世界的に航空の自由化が進み、格安航空会社も急増するので、整備や運航コストを切り詰めた結果、安全性に疑問符がつく。 欧州連合(EU)は独自に事故が多発するインドネシアの航空会社の運航禁止という強硬措置をとり始めた。サービスや低価格政策をとっても、国民の生命、安全を犠牲にすることはできない。(8月30日)
20. 戦闘機で知られるロシアのスホイ社が、年内の初飛行を目指して旅客機開発に取り組んでいる。欧米の企業をパートナーに迎え、「古い」「狭い」「危ない」という旧ソ連ロシア製旅客機の汚名を返上し、世界の市場に割って入るのが目標である。座席数100前後のジェット機は、現在カナダのボンバルデア社と、ブラジルのエンブラエルの2社のものだが、スホイ社は「居住性、燃費、技術サービスの供与、機体価格、いずれをとっても十分競争可能」としている。座席数95の短、中距離旅客機で、国内、地域路線の運用を想定して、現在米ボーイング社など欧米30社がこの種短中距離型の開発に取り組んでいるという。(9月3日)
21. 中部国際空港の誘導路に最近ウミネコ(カモメ類)が数千羽群棲して、運航障害になっている。既に2、3度航空機と衝突した例もある。もしこれが発着の際、エンジンにすこまれることがあると、エンジンブレイドを破損し、大事故になりかねない。私(久保)は羽田で昭和57年から3年半にわたり野鳥駆除に携わったが、鳥が嫌がる周波数の音域を流したり、定期的に爆音を発する装置を要所に置いたり、花火による駆除を行った経験があるが、当初の効果のみで鳥が馴れてくると効果がなかった。外国文献にも当ってみたが、結論は、空港から鳥のエサを無くすということであった。鳥が最も恐れるのは人間であり、面倒ではあるが係員が銃を持って、24時間体勢で追っ払う作業以外に方法はなかった。野鳥るいはエサを求めて生きのびるためには、ジェット機の爆音にもめげないしろものである故、彼等との根比べということになろうか。海辺に面した空港の安全維持のための知られざる苦悩である。(9月15日)
22. タイ南部のブーケット国際空港で16日、バンコク発ワン・トウー・ゴー航空269便(MD-82型)が着陸に失敗、88名死亡、42名が負傷した。同社は格安航空会社の一つで、人件費削減、サービスの簡略で大手に対抗して運営している。欧米では小型機を一括購入してコストを下げているが、アジアでは大手から中古機を購入して運航し、しばしば事故を起こしている。他山の石である。(9月17日)
23. 日中国交正常化35周年を記念して、日航、全日空、中国東方航空、上海航空の4社が羽田−上海(虹橋)間のチャーター便が一日一往復づつ、計8便就航する。 現在の成田−上海(浦東)に比べ、現地での空港アクセスが良く、約2時間程短縮される。平成22年の上海万博を控え、観光客にも人気が高く、上海へのチャーター便は大きなビジネスチャンスになることが予想される。(9月29日)
24. 国交省は9月27日、目的地までの飛行距離を短縮する新しい航法の運用を発表した。 各機に搭載したコンピューターと全地球測位システム(GPS)との併用で実施可能となった。空の混雑解消につながる。現在は、全国約160カ所の地上無線施設の信号を利用しているが遠回りになるため、コンピューターとGPSで自分の位置を正確に把握して飛行するため、現在より直線に近いルートで飛行できる。 時間的にも燃費的にも年間約数十億円の節約になるという。羽田に4本日の滑走路が完成する2010年度には発着便が今より4割程度増えるという。(9月30日)
25. 三菱重工業が5年後の12年度を目指して作製する三菱リージョナブルジェット(MRJ)の国産旅客機の機体概要を発表した。開発するのは86〜96席の「MRJ90」と70〜80席の「MRJ70」の小型ジェット機で、一機30億〜40億円程度。「東京−香港」などの短中距離での運航を想定している。 主翼にはアルミ合金ではなく、炭素繊維と樹脂を組み合わせた複合材を採用して軽量化する。燃費性能にすぐれた米プラット&ホイットニー社の新型エンジンを採用し、総開発費は1500億円程度で、経済産業省が約400億円を支援する。 今後20年間で小型ジェット機は世界で5000機以上の需要が見込まれ、三菱重工は1000機程度の受注を見込んでいる(10月10日)
26. 鶴首して待たれるボーイングの中型ジェットB787の納入時期が、運航管理のソフトウエア開発の遅れなどから、8年5月の予定から約半年ずれ込むことになった。現行の機種より燃費や重量も2割方減、航続距離が大幅に延びるため、全日空が50機、日航が35機発注し、国際線への導入をも計画している。(l0月12日)
27. 中小型機が注目される中、ホンダジェットが専用フライトシュミレーターを使用して小型機販売拡張を図る。10年から年間70機の生産を開始し、既に100機以上受注している。(10月20日)
28. かねて石原都知事が主張していた「横田基地の軍民共用化の問題」は、その後米軍の消極的姿勢で進展していないようだ。これは横田基地の空域が南に拡がっており、民間機が使用できれば羽田から西方に向かう、又は西方から来る航空機が、わざわざ大島廻りで飛行しなくて済むという、燃費と時間の大きな節約になることから知事が熱心に主張した問題であり、一日も早い合意が待たれる。(10月23日)
29. 10年に成田のB滑走路が延長され、羽田の新滑走路が完成すれば、首都圏の年間発着枠は約13万回増加する。これにより当面は需要を賄えるが、国交省の試算ではアジア向けの利用増で17年度には需要が供給を上廻る。よって首都圏に第三空港が必要になる。 ここで自衛隊の百里基地(茨城県)の民間機共用が浮かび上がり、09年度の茨城空港の出現を予定している。北関東は空港空白地帯であり、千葉、埼玉の乗客をも視野に入れている。潜在利用人口約1200万人で北の玄関口にしたいと県も力を入れている。ただこの第三空港は欧米より普及が遅れているコミューター機、ビジネスジェット機の利用など、住み分けを考える必要があるとする学者もいるが、これを議論する時間はあまり残っていない。(10月23日)
30. 航空大手会社は原油高のために運賃の値上げに頭を痛めている。値上げは昨年4月と今年4月につづいて行われたが、国内線は特にむずかしい状況にある。新幹線に対抗出来なくなりつつあり、新大阪→鹿児島間が全面新幹線化(11年)されると4時間で結ばれ大きな痛手となる。不採算路線として福岡→新潟間を廃止せんとしたが、国交省から再検討を指導されたという。(10月25日)
31. アジア各国の経済発展と円安が追い風となり、日本観光者が急増している。 国際観光振興機構によると、06年度の訪日外国人数は前年比9%増の733万人、うちアジア地区からの客は524万人と3年間で1.5倍に増えた。はとバスは10月からアジア特に中国語による案内を2コース増やし4コースとし3万3千人に増やす。 藤田観光は9月に新宿のホテルに中国語、韓国語、英語に対応できる専用のチェックイン・カウンターを設置した。(10月25日)
32. シンガポール航空はエアバス総二階建て大型旅客機「A380」による飛行を、チャンギ空港とシドニーを結ぶ路線で始めた。スイートクラスは個室にもなり、23インチのテレビ画面を備えるほか、隣席とつながるとダブルベットにもなる。ビジネス、エコノミークラスを含め、計471席で日本便は来年を予定しているという。(10月26日)
33. 日台間の民間航空便は1975年以来、日航と全日空のそれぞれの子会社、つまり日本アジア航空とエアニッポンで行われていたが、来月から取決めにより、日本側は本社が運航することとなった。台湾側は現行4社を6 社に増やし、小松、宮崎にも運行する見通しである。(10月26日)
34. ボーイング747型の愛称として知られるジャンボ機は、全長70メートル、最大550席の巨体だが、就航以来35年を経た今、原油高による燃料費の高騰もあって「クラシックジャンボ」の愛称を残して10月31日をもって姿をす。747-200B型はジャンボ初期の完成型といわれ、時代を象徴する名機であり、海外旅行を庶民的にした功績も大きいとされるが、便を多くして中、小型機を多用する時代となり、747-300型機も日航9機を残すだけとなった。ハイテクジャンボ、テクノジャンボと呼ばれる新型は日航38機、全日空19機が活躍中だが、日航は22年から順次引退させる。理由はエンジン4基だとどうしても燃料量が多いので、名機も原油高には勝てないということだ。(10月30日)
35. 政府間の合意がなければ海外の航空会社は地方空港への乗り入れが出来なかったが、国交省は乗り入れ、増便を自由に認可すこととした。今後、観光振興を目的に国際線の路線拡大を目指す自治体の誘致競争ははげしくなるであろうが、結果は半年、一年の結果を見ないと分からないと思われる。(11月2日)
36. 中東最大の航空会社エミレーツ航空は、エアバスの大型機A380を11機、中型機A350を70機計81機を発注したという。日本円にして約2兆2千億円で、エアバス社最高の受注額であるという。一方、ボーイング社のB787型機はエアバス社と受注を競っているが、今年1月〜6月間についてはエアバス社の方が約130機多く、流石原油高騰の強みであろうか。(11月13日)

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第39号 平成19年6月1日発行

「民間航空界の動き」

編集部

 

1. 全日空は07年3月に中部〜広州便を開設し、小型機で「ビジネス・ジェット」を導入する。トヨタやホンダの乗用車組立て工場がある広州には、トヨタ需要があると見込んだためである。(12月26日)
2. JTBは本年の旅行動向見通しとして、過去最高の1790万人海外旅行者を発表した。アジアを中心としてビジネス需要が主だ。団塊の世帯の大量定年などで観光需要も増加するとして、香港、マカオ、中国、欧州が人気を集めるとしている。(1月4日)
3. 桂文珍氏は落語家であるが、小型機を持ち操縦資格を持っており、空港問題に一家言を持っている。即ち、国は国土の均衡ある発展をうたい、同じような空港造っている、利便性も大事だが、付加価値も大事で、中部空港は温泉があって楽しい。乗客が少ないなら物を運ぶ。小さくて値段の高いものを運べば人も付いてくる。小松空港は小さいながら中国、韓国に目を向け、能登、金沢観光を組み込んだツアーを企画して好調だ。 国はジャンボ機のことのみを考えているが、小型機によるコミューター便を拡充すべきである。空域はビジネスや軍事だけのものではなく、みんなのものだという「空の教育」が必要だと云っている(1月8日)
4. 燃料価格の高騰と、09年末の羽田の再拡張(予想)にともなう発着枠の拡大と赤字路線を減らして収益性を高めるため、航空各社は路線を再編成する計画をもっている。中でも、年内に休止する10路線が上がっているが、神戸〜熊本、神戸〜仙台、神戸〜新潟、神戸〜鹿児島の各線が目立つ。神戸は開港して未だ1年未満である。乗降客が少なければ貨物に主点置くとか、中国等国際線を狙うとか、建設前の需要予測は如何なものであったのであろうか。(1月5日)
5. YS-11が昭和39年に就航して約42年後全機が退役した。屋内で保存するため1号機を、羽田の再拡張後建設されるべき航空博物館に展示すべき筈であったが、その計画が頓挫し、未だ保営場所が決定していないという。(1月10日)
6. 日本航空と全日空は共同で大型航空機の整備士の育成を行なうと発表した。団塊の世代の大量退職に対応するため、日本航空専、中日本航空専の学生インターンとして両航空会社が受入れ、一等航空運航整備士資格を学生時代に取得できるようにし、人員確保のため、初の共同事業である。(1月24日)
7. 国産ジェット機復活研究者魂で、ホンダが飛んだという。速くて安い「ハミング・バード」の愛称で藤野道格(みちまさ)氏(46才)の努力によるものである。 蜂の様に高速で羽ばたき、空中に停止して花の蜜を吸う動作に似ているところから、1986年基礎研究から95年にエンジンの実証試験を開始し、03年初飛行に成功、06年事業化決定、ホンダジェットの受注を開始。時速778キロ、燃費は同程度のジエット機に比べ3割方やすく、365万ドル(4億3800万円)で1割以上安価である。2010年の出荷を前に、現在予定の70機を上回る100機の注文が入った。三菱重工の「MU300」以来22年ぶりである。
8. 航空事故の調査と捜査の両立について、空の安全のために事故調査の精度を高める必要性が増す中で、捜査はどうあるべきか、早急に協議すべきであるとの議論が高まっている。80年代に登場したB767型などハイテク機は、離陸を除いてほとんど自動操縦できる。97年6月に起った日本航空MD11型機の志摩半島上空で起った激しい揺れで乗客、乗員14名が重軽傷を負い、1人が1年8ケ月後死亡した事故について、業務上過失致死傷罪に問われた機長は、1、2審で無罪となった。米国、ドイツ、英国とも調査の結果刑事裁判に持込まれる方法が異なっているという。(2月7日)
9. 旅客減問題で航空会社が苦慮しているが、貨物輸送についても日航、全日空で制空権争いに入っている。平成19年度、日航は関西〜大連、成田・関西〜上海など中国向けに6路線13便を新設する。全日空は米航空運送会社「ABXエア」と業務委託契約を結び関西〜北京ほか主要7拠点を運航する。アジア路線拡大するのは、好調なアジア経済が背景にあることと、燃費の良い中型機材に更新するとともに、大型旅客機を貨物機に改造するなどして業績を上げようとするものである。
10. 羽田空港に働く女性のために、保育園が4月から空港第1ビル3階に開設される。空港での従業員2万2千人のうち約4割強が子育てを行う女性で大変結構な企画である。(2月10日)
11. 世界空港旅客数で昨年羽田は世界4位になった。1位アトランタ8500万人、2位シカゴ、オヘア空港7600万人、3位ロンドンヒースロー空港6800万人、4位羽田6500万人。なお、漁業補償で遅れていたD滑走路の建設は3月末に着工するという。(3月10日)
12. 全日空1603便DHC8-400型機が大阪から高知に着陸の際前輪が出ず11回ゴー・アラウンドで前輪を出すべく操作したが計画通り行かず、主車輸で着陸、機体前部は胴体着陸の状態で約2時間後無事着陸した。乗員4名乗客56名は無事であつた。(3月13日)
13. 世界の空港利用満足度調査で、昨年中部名古屋空港がトップに立った。これは空港の清潔、サービス度など20項目に関する空港利用者のアンケート調査によるもので、他空港はもって範とすべきである。(3月15日)
14. 天草航空DHC8-100が、熊本空港に着陸の際主脚、前輪とも出ず、手動で無事着陸した。乗員、乗客18名は無事。1週間前に高知で発生した前輸事故に続いて起こった。(3月20日)
15. 建築家菊竹氏の意見:日本の第一印象は空港で決まる。国際空港の場合、システムの共通性が求められ、あらゆる都市機能を持つべきだ。例えば鉄道、地下鉄、バスとの接続、さらにターミナルビル内にホテル、オフィス、展示場、会議室、ショッピングセンターなど都市施設が組まれ、パソコン、ビジネスサポート、マッサージチェア、リラックスルーム、子供のプレールーム、救急医療室をととのえ、日本もアジア最大の経済文化と国際交流の活動拠点として空港都市をめざしてほしい。その力が日本にはある。(3月21日)
16. 羽田の4本目の滑走路建設着工、08年の北京オリンピックの開催により日本をアジアのゲートウエイとすべきだ等さまざまな意見が飛びかつている。日本の国際空港の現状はきびしく、成田は年間20万回の発着、北京が29万回、ロンドンは48万回と、数のうえではたしかに劣ってはいる。上記以外のアジアで韓国の仁川、香港、シンガポールが続々巨大空港を開港しつつある中で、成田の国際線の一部を羽田にもってきて、羽田の滑走路増設以前に国際化の前倒しを実現せよという意見もある。滑走路さえ増えれば、発着回数が増加するというのは早急な論で、空域の問題、工事中既存滑走路に与える影響、例えば高いクレーンが発着を制限する、また客数が増えればヒトの出入でC・I・Q(※)も増員を要する。もう少し、落着いた議論がなされないものか。(3月30日) ※HP管理者注:税関(Customs) 出入国管理(Immigration) 検疫(Quarantine)
17. いま航空機の整備については問題がある。航空会社はコスト削減のため、定期的な点検を、中国や東南アジアの安い整備会社で行う委託化を拡大している。 国は「規制緩和で安全規則までは緩和しない」との立場だが、現場では疑間があり、「事故を起こす会社は自然淘汰される」と主張する学者もいるが、犠牲者が出るまで放っておくことは出来ない。 先日の高知空港での緊急着陸で、万一エンジンが地表と接触すれば火災が起こったであろう。今回の事故調査が、メーカー依存の整備体制の現状にまで踏み込んだものに期待するとは、全日空機長の適切な意見である。(3月31日)
18. 朝日新聞社機神風号は70年前、1937年(昭和12年)4月6日、立川飛行場から当時世界最速の時速500キロで航程15,000キロを94時間でロンドンまで飛行し、スピード世界新記録を打ち立てた。時速500キロといえば、先日姿を消したYS-11と同じ速度である。立川から主寄港地は、台北、ハノイ、カラチ、バグダッド、アテネ、ローマ、パリで機長は飯沼氏(29才)、機関士は塚越氏(42才)であった。(4月6日)
19. 石原知事が3選を果し、かねて主張していた横田基地の軍民共用について積極的に動きはじめた。かねて横田空域が、民間機の航路を大島回りにしていることにつき、東京→大阪などを直行させるということで燃料の節約と短縮に役立つという。今年8月頃実現を目指している。空域問題に目をつけたことは、嘗て知事が運輸大臣を経験したことが発想のもとだと思われる。オリンピックも実現したら、東京はじめ日本全体の活性化に役立つだろう。(4月10日)
20. 3月に起ったカナダ製「ボンパルディアDHC8型」の高知空港における着陸時の事故については、カナダ側の問題意識については、我国と温度差があるようだ。彼等は、トラブルによる引返しや、目的地変更、また人身事故がなければ、「無事だったので問題ない」という感覚である。 今航空界では、ハブ・アンド・スポークに加え、ポイント・ツー・ポイントというローカル空港間のネットワークができつつある。このローカル線に75名の乗客を乗せ、短時間で格安の料金で運航できるこの種機体の運航は、わが国の航空会社にとっても重要な問題であり、安全運航に力を入れるのは当然である。(4月12日)
21. JALは羽田空港の深夜、早朝帯(23時−06時)の国際線チャーター便を、07年度に前年比7割増の300便程度とする方針を明らかにした。ソウルやホノルルに深夜出発、早朝に戻る便を連休、夏季を中心に設定する計画。羽田〜金甫便の外に、羽田〜仁川便を金、日の深夜に運航する。7、8月には、地方空港から最終便で到着したものを深夜便でホノルルヘ運ぶ「乗り継ぎチャーター」を実施する。さらに中国・マカオ便を新設、グァム、モンゴル・ウランバアトル線も開始する。(4月19日)
22. 航空燃料の値上がりで、機体を軽くするため、航空会社は苦心している。JALはB777クラスで500キロ軽くするため、機内食のスプーン、フォークの厚さを0.2ミリ薄くし、2グラム減量。軽量磁器も導入する。この取組みで年間1千万円、グループ全体で7億円分の燃料を節約できるという。(4月20日)
23. 航空機産業の魅力は、成長性と市場規模である。米ボーイングの次期主力磯「B787」だけで2020年までに、3500機4千億ドルの需要が見込まれる。今世界の航空機は更新時期で、中国、印度などで大量の需要を想定し、製造技術面で部品提供の日本の中小製造業にとって参入の好機である。 中部地区の企業は今自動車部品の製造で手いっぱいで、秋田の産業技術研究センターが中心となり、「輸送機コンソーシアム」を結成し、三栄機械が参入する。 長野の諏訪市で、県テクノ財団が航空機産業参入の支援事業を開始した。また、岡山の山陽鉄工(倉敷市)は新工場で、胴体の骨組み部品や、主翼部品を製造する。以上、自動車のみならず航空機分野でも産官一体で一歩リードをはかっている。(4月23日)
24. 世界最大の旅客機A380が、来年にもシンガポール、パリから飛んでくる。成田、中部国際、関西国際空港でそれぞれ週64往復の大型機の現行枠に週16往復を追加する。まだ上記以外の空港でも就航があり得るという。(4月24日)
25. 京浜急行電鉄は、羽田空港に建設予定の国際線族客ターミナルに直結する京急空港線「国転ターミナル駅(仮称)を発表した。
  ホームの幅は最大64メートルあり、荷物を運搬するカートをホームに持ち込めるよう広めに設計し、1日1万人が乗降する見通しだ。同駅は羽田空港駅と天空橋の間に設け、2009年12月に完成、開業は空港拡張事業の着工が遅れたので、2010年秋ごろの予定である。年間約30億円の増収になるという。(4月25日)
26. JALグループ、全日空のほかに新規参入の数社がいずれも黒字転換に苦しんでいる。
  北九州〜羽田を結ぶスターフライヤーは、早朝、深夜便でビジネスマンの出張をねらった。羽田〜福岡、羽田〜神戸を低価格で戦略を練ったスカイマーク。羽田〜札幌のドル箱路線をねらったエア・ドウなどいずれも燃料価格の高騰や価格競争になやみ、宮崎を拠点とするスカイネットも全日空との共同運航を余儀なくされた。大手会社は乗り継ぎなどで利便性を高められるが、新規会社にはそれが出来ず、起死回生の妙手はなかなか見つかりそうにない。(4月26日)
27. 地方空港(約100港)の8割が赤字経営に苦しんでいるという。主たる理由は、減免している影響が大きい。それは航空会社も採算が厳しく、地方路線の廃止や減便が原因という。除雪費の負担が重い青森空港の赤字が6億1400万と最も大きく、着陸料の1/2の減免が大きな原因という。岡山が比較的良いのは04年上海、ソウル便を大型化したので6900万円の赤字にとどまった。佐賀はもともと福岡と競合して発足したので、深夜貨物便に力を入れ、3億1600万円の赤字で、まあまあといった成績である。(4月30日)
28. 空の自由化攻防が大詰めを迎えている。「アジア・ゲートウェイ戦略会議」は5月中旬の最終報告に向け大詰めの調整に入っている。要は、首相官邸側は、路線や便数を航空会社の届出制として民間の需要を迅速に取り込めようとしているが、政府は2国家間交渉が基本で、成田空港の発着枠は限界に達し、慎重な姿勢を崩していない。しかし、そのカギは羽田にあるとし、24時間運用と、10年に第4滑走路が出来るので、現在の早朝、深夜のチャーター便の枠をひろげ、昼間帯の国際線の発着枠を3万回新設するというのが官邸側の意向である。このあたりが、「羽田は国内線、成田は国際線」という政府側の見解と異なるところである。交通経済学者は「自由化は世界の流れで、深夜に羽田を出て、成田に帰るなど考えられないと、日本だけが取り残されるとしている」(5月1日)
29. 日本の航空機産業が活況を呈している。平成18年の国内航空機生産額は1兆1900億円と過去最高で、米ボーイングの新型機「787」では国内メーカーが全体の1/3以上の製造を担当している。三菱重工はこの新型機の主翼製造を、川崎重工は胴体を、富士重工は胴体と主翼をつなぐ中央翼をと、日本メーカーが機体の35パーセントを生産し、平成20年5月に1号機が納入される。日本の航空機産業は、世界市場で活躍する道を着実に歩みつづけている。(5月2日)
30.  羽田の再拡張については今まで再三論ぜられてきたが、環境対策を十分に配慮されたい旨の議論が出ている。東京湾岸は工場、流通基地、オフィスビル、マンション、ごみ処理場などが立地し過酷な環境負荷が続いている。工事の進行に応じてこれらに対応して東京湾の水質汚染を進めてはならないとしている。(5月6日)

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第38号 平成18年12月1日発行

「民間航空界の動き」

編集部

 

1. ホンダと云えば自動車メーカーだが、今6、7名乗りの小型ジェット機の開発を目ざしている。2010年を目途に、1機4億6千万円程度で、航続距離は2000キロ余りで、市場は専ら米国で、5千以上ある空港の利用を目指している。また富士重工も米エクリプス・エビェーション社のエクリプス500向けの主翼の量産をはじめた。操縦が簡単であること、管制システムを低コストで導入するためには、「自動車やカーナビの技術力が生かせる」といっている。(7月30日)
2. 昭和40年(1965)に就航した国産旅客機YS-11は、40年以上の活躍を終え、9月30日定期路線から姿を消す。構造は極めて頑丈だが、衝突防止警報装置の搭載がコスト面の問題などから困難なのも姿を消す一因であるという。旧日本国内航空だけでも40機が稼働していた。日本では姿を消すが、南米あたりではまだ活躍していると聞く。(7月31日)
3. 東アジアではハブ空港狙いの戦いが熾烈である。ハブ空港とは複数本の4000メートル滑走路有し、周辺の空港へ放射状に延びる空港ネットワークをもつことが条件で、周辺への物流や各種産業への波及効果が大きく、国全体の国際競争力の向上につながると期待されている。 韓国仁川空港は既に4000メートル滑走路2本が稼働、中国の北京空港も来年までに3000メートル以上の滑走路3本に増やし、年間50万回以上の離着陸を目指している。成田も一刻も早く4000メートルの外に、現在の2180メトルの滑走路をジャンポ機が使用できる様に延長し、空港の競争力を高めねばならない。(8月9日)
4. 東京税関の東京航空貨物出張所は、羽田の日韓シャトル便や中国との貨物便の検査をしているが、2009年に4本目の滑走路が出来れば、羽田の国際化も視野に入れ、税関の業務時間を現行の午後5時から延長することも検討している。(8月9日)
5. ロンドン・ヒースロー空港では10日、米国行き旅客機数機をねらった液体爆発物テロを企んだ容疑者24名を逮捕した。多くはパキスタン系英国人であったと云うが、アルカイダ系のテロが多く、空港ではダイヤが乱れ、大混乱を呈した。日本でも今後乗客の手荷物検査を厳重にするよう指示が出された。その結果、人件費の増加と顧客離れが負担となり、日本航空や全日空の業務にも及びそうだ。(8月13日)
6. 全日空と双日はパイロットを派遣する新会社を米国で設立する。パイロットは07年から団塊の世帯の退職で、400名程度不足する。新会社はホノルル、資本金1億1千万円は全日空、双日、米国中堅パイロット派遣会社が3分の1づつ出資する。09年には羽田の滑走路が4本になるので、この共用開始にも間に合う様、双日(航空機リース会社、チャーター便の運営会社を傘下に持つ)も新会社との相乗効果を期待している。(8月18日)
7. 米ケンタッキー州レキシントンの空港で、デルタ航空の子会社の中型機(50人乗り)が早朝2100メートルと1000の二つの滑走路のうち、短かい方を利用し出発したが、充分に浮上せず墜落し、50人中49名が死亡した。同機は離陸に1400メートルを必要とするが、何故か短かい方を使用し、これが管制官の指示によるものか、機長の判断によるものか調査中であるという。他山の石である。(8月29日)
8. 2009年度の羽田空港再拡張によるある程度の国際化をにらんで、横浜市は、国の考える2000km以内の就航範囲に対し、独自の調査で6000km、つまりASEAN諸国を含む東アジアの主要都市の殆どを含む意向を示した。しかし今のところ、国と埋立て予定地の魚協との話し合いが完全ではなく、今年度中の工事開始がむつかしい状況にある。(9月1日)
9. 羽田では管制官と日航、全日空のパイロット間の交流会を今年度から5回を12回に増やす。会合を終えたあと、お互いに管制のシミュレーター、フライトシミュレーターを使用して業務の内容を知り、相互の聞き違いや云い誤りの防止で事故を防ぐ。大へん良い企画である。(9月7日)
10. 羽田の再拡張を待たずに、先日訪中した安倍首相と中国の温家宝首相との間に、日中シャトル便を羽田〜上海に就航することに基本合意したという。11月に日中主脳会議で正式合意というが、2003年に開始した羽田〜金甫間と同様な、国内線の飛ばない早朝又は深夜を利用して行われるものと思う。羽田はアクセスが良いので、各国は羽田との相互就航を望んでいると思われる。(11月11日)
11. ヘリコプターの使用は軍用のみならず、従来海上保安庁、警察、消防、新聞社などで人命救助、報道等に大いに活動していた。脳梗塞、脳卒中、心筋梗塞など一刻も早い治療を要する、殊に老人に対するドクターヘリの活用が注目されている。「愛する家族を失わずにすむ人の心の幸せは、お金ではかることはできません」と好評である。(10月23日)
12. 横田基地(米軍)の空域の南側が返還され(別図参照)、民間機の羽田、成田と西日本を結ぶ発着機が燃料の節約と、飛行時間の短縮に有利になる。飛行時間は約9分、燃料は10パーセント節約できる。10月末に米軍と最終合意するという。(10月24日)
13. 2009年予定される4本目の滑走路の新設で、羽田の発着枠は1.4倍の年40万7千回に増えることともに、国際線アジア各都市とも路線が開設されるとメディアは宣伝する。しかし実際は新滑走路新設のため、国はこれから10あまりの漁協と周到に補償交渉をはじめるというから、今年中の工事着工はとても無理だと思われる。(10月25日)
14. 半年以上前に開港した神戸と北九州空港のその後の成績は如何? 神戸は1日の発着枠が30往復便に限られ、国際線も認められていない。いま、便数増や早朝、深夜便の拡大を求めている。北九州は東京便の依存度が高いので、首都圏での知名度を上げる必要ある。24時間運用の利点を生かした、早朝、深夜便のPRや、格安運賃の導入など独自サービスを提供することが必要である。(10月28日)
15. 成田空港の冬ダイヤ(10月〜3月)の発着便が、前年同期に比べ19便の528便で過去最高となる見通しだ。特に日中航空交渉の合意により週35便増となる。(別図参照)。製造拠点の中国移転に伴う、電子部品や自動車向け貨物の需要をふまえて、貨物便も拡大している。旅客便減が続く北米路線と対照的に、航空各社はビジネス需要に加え、2008年の北京五輸、2010年の上海万博など観光客の拡大も視野に旅客増にも対処したい方針だ。(10月29日)
16. 空港インフラの整備がいま問題となっている。 (1)空港の枠不足を端的に示したのが、中国が成田への乗入れを週数十便の大幅増を求めたのに対し、前記15で述べたとおりとなった。 (2)一方地方空港の整備は進んだが、需要不足で、鳥取県は「地域経済発展の布石」と称してアシアナ航空に財政支援をし、富山県も上海便に支援策を講じている。 大都市部では大混雑なのに、地方ではガラガラ。 空港は貿易や観光振興を含めて日本経済を活性化するための戦略インフラであり、着実な整備が求められている。(10月19日)
17. 空の旅で疲れた体を湯で癒す。北九州空港や鹿児島空港で「足湯」施設を、三沢空港では徒歩3分の所に温泉浴場を利用できるサービスを行っている。地方空港では一般に客足が落ちているので、様々なも催しを競い合って空港振興を図っている。(10月30日)
18. 中部国際空港はハプ(拠点)空港としての存在感を見せている。旧名古屋空港より長い3千5百メートルの滑走路があり、24時間稼働し、国際貨物取扱量は前年同期比25パーセント増、空港会社は09年度に50万トンの達成を見込み貨物地区を拡張し昨年の万博の反動はないと見る.旅客便では6月にエミレーツ航空のドバイ便、フィンランド航空のヘルシンキ便が就航、台湾、中国便も増加し、同空港からアジア方面へ向かう観光需要を下支えする構えだ。(10月31日)
19. 佐川急便といえば宅配便の会社で、貨物代理店でもないと思われるが、近く直接A-300型機を使用して国内貨物の輸送をはじめるという。旅客は大都会の空港を除いて延びがいま一つだが、これはテロの影響と原油の高騰にあるものと思われる。航空貨物は勿論軽量で高価なもの、電子部品や自動車部品が主であったが、今では生鮮食料品も航空貨物輸送部門にかなりの地位を占めるようになった。(11月1日)
20. 旅客が急増しているアジアだが、航空事故の調査レベルはまだ低い国が多い。アジアは全損事故の発生率で、アフリカ、中近東、中南米に次いで多いので、日本の航空・鉄道事故調査委員会が、8月末インドネシア、フィリッピン、ベトナムから3名の調査官の研修を受入れ、2週間にわたりフライトレコーダー等からデータを抜き出す方法を教えた。9月中旬からは日本の調査官が、フィリッピンの航空保安大学で1ケ月の養成を行った。公正な調査には、自力調査が不可欠であるという。(11月1日)

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第37号 平成18年6月1日発行

「民間航空界の動き」

編集部

 

1. 昨年は愛知万博と、中部国際空港の開港で話題の中心は専らこれで占められた。中部国際空港は、勿論万博開催中は、盛況を極めたが、万博終了後もほぼ予定通りの旅客があった。即ち当初予定の国際線700万人、国内線500万人計1200万人、月100万人は乗客があったそうである。
2. 空港を造るにあたっての需要予測は大変むつかしいものであることは、以前にも触れたが、名古屋の場合、当初からトヨタ(自動車)の努力と、途中三菱重工との合弁による航空業界への進出、更に、両隣りの岐阜県及び三重県の協力も見逃せない。これらの地方県もイベントや、特産品の販売で空港の発展に寄与したという。(2月1日)
3. 2月16日に神戸空港が開港し、3月には北九州空港がオープンする。神戸の場合は関西に関西国際と伊丹空港があるので、今後どの様な集客を行うのか?勿論東京線が主たる国内線だろうが、北九州もJALのほか、スターフライヤー(北九州市)という新会社が、格安、激安の運賃で臨むようで、今後対応が見物である。(2月6日)
4. 国産大型ロケット「H2A」の9号機が鹿児島県の宇宙航空研究機構種子島宇宙センターから打ち上げられた。これによって航空管制は2機体制による管制方式となり、海上を飛ぶ航空機は間隔をより詰められるようになる。(2月18日)
5. 神戸と北九州の新空港のオープンについては3、で記したが、3年後には静岡にも空港を造るという。静岡など新幹線で1.5時間で東京と結ばれるので、どういう客の奪い合いをするのか。我が国は1種から3種の空港を合計すると100個になるが、香港、上海、ソウルなど大空港を短期間に完成させているので、アジアのハブ空港はそれらに持って行かれるのではないか。(2月26日)
6. 日中間は、政治的にはギクシャクしているが、経済的には上海線はまことに好調のようである。成田の発着枠が足らないのでそれが思う様にならないのが現状で、まことに勿体ない話と思う。(2月21日)
7. 米軍の横田基地は、その空域が一都8県にまたがり、民間機の羽田、成田の西方への空港の発着(ソウル、北京を含む)は、現在でも迂回(大島回り)、急上昇(東京湾上)が計470便となり、09年には650便となる。1機あたり9分、燃料節約は80億から109億円となる試算である。早く協議がされることが望まれる(2月25日)
8. 気象の話題を2つ。
(1)春一番…冬には西高東低で大陸から強い北西の風が吹くが、春ともなると一時的に大陸から日本海に低気圧が入り、東南東から日本列島に暖かい強風(秒速約8メートル)が吹く。これが春一番で、私の経験でも羽田で、必ず2月〜 3月にかけBランウエイの発着を要する日があつた。22の着陸はOKだが、離陸は川崎コンピナートの上空を飛ぶということで避けるよう指示されていた。(2月27日)
(2)ラニーニャ現象…太平洋赤道の中央部から南米ベルー沖の海面水温の低い状態が続くこと。この冬の寒さはこの為といわれ、夏は猛暑、北日本は冷夏が予想されるという。逆にこのルートの水温が高くなる現象をエルニーニョと呼び、冬暖かく、夏割に涼しいといわれる。いずれにしてもこの問題は更に研究を深める必要がある。(2月28日)
9. 日本では少子高齢化が進んでいると云われているが、米商務省の調査では2月25日に世界人口が65億人を突破したという。発展途上国の人口増加は大きく、2013年に70億を越え、2050年には92億人になるという。現在世界第2位のインドが16億人で中国を抜き、日本は1億人弱に減り、現在の10位から17位に順位を下げる予想である。(3月1日)
10. 国際航空運送協会(IATA)が昨年「空港職員の接客態度」などについて、世界の空港で利用者にアンケートをとったところ、中部国際空港が、中規模空港部門で1位を獲得した。「接客態度」「ターミナルの清潔さ」「空港全体の雰囲気」で高い評価を得た。世に、ヒト、モノ、カネというが、やはり社会的評価を与えるのはヒトが一番で、他空港はこれを模範とすべきである。(3月10日)
11. 航空貨物輸送会社が2社、8月に発足する。1つは全日空と郵政公社の合併で「ANA&JPエクスプレス」と、佐川急便の「ギャラクシーエアラインズ」。ANAは関西−上海及び中部−シカゴ間を、佐川は羽田−新北九州と、羽田−那覇間を、景気回復の追い風もあって電子部品や食材、書類などを運ぶ。貨物市場の成長と、輸送時間の短縮をはかる。一方、日本航空は国際貨物便を週51便から18年度に61便に拡大する計画で、電子部品などの需要増に対応する。航空貨物業界は今後国内外で「戦国時代」になりそうだ。(3月14日)
12. 北九州空港は3月16日開港した。(3)でも既述したが、羽田、名古屋(小牧)、那覇間21便で283万人を予測している.九州北部では自動車産業の集積が始まっているが、中部国際空港ほど条件が良いとは考えられない。要はアジアの空港整備は今大競争に入っており、中国、韓国、マレーシアで4千メートル級の滑走路を複数もつ巨大空港が出現している。空港は日本の国際競争力を左右する重要な社会資本である故、それにつながる空港整備政策が望まれる。(3月17日)
13. 開港から1年を経過した中部国際空港は、万事好調とみられたが、燃料高騰や乗り継ぎが伸びず、国際線は昨年秋以降313便から308便に減少した。ただ貨物便は好調で今後も増加が見込めるという。関西空港との競争もあり、今年の成績が正念場という。 需要の予測は本当にむつかしい。(3月23日)
14. 東南アジアの主な国際空港 東南アジア各国による空港拡張競争が激化している。 マレーシア・クアラルンプール国際空港で、東南アジア初の格安航空会社専用の旅客ターミナルが開業する。投資額は約33億円で年間1千万人が利用する。シンガポールのチャンギ空港では、格安会社向けの新ターミナルが開業しタイガー・エアウェイズなどが拠点とする。これら格安用にはゲートラウンジや動く歩道もなく、従って使用料は従来の25%安となる。ベトナム、タイでも新空港を建設し、従来のものを格安向けとする。東南アジア各国はハブ空港の覇権争いを勝ち抜くため必死である。日本は現状に甘んじてはおれない。(3月24日)
15. 航空会社における女性職場の花形といえば、キャビンアテンダントであるが、あとわずかでジャンポの機長となろうという女性副操縦士がいる。佐藤千春さんといって、一般大学を卒業後航空大学を出て日航入り、大変厳しい訓練を経ている。宮崎空港で単独飛行中、着陸しようとしても激しい雨で滑走路が見つからない。海面近くまで降下して空港が見えたときは一瞬力が抜けたが、満天の星の中、流れ星を見たときは至福を感じたという。早ければあと3年で機長昇格試験があるが、休みで地上にいるとウズウズしてくるそうである。(4月5日)

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第36号 平成17年12月1日発行

「最近の航空ニュースから」

編集部

 

1. 日本航空はリゾート路線の運休を検討している。即ち関西−サイパン、福岡ホノルル、香港、ソウルの3路線、中部−グアムなどで7月に申請する。理由の最たるものは燃料の高騰です。(6月26日)  
2. 成田の暫定滑走路“B”の延長を北側に変更して総長2500メートルにすることに決定した。南側には依然として地主農家との話し合いがつかず、何時までも現状のままでは日本がアジアのハブ(主要)空港としての面目を失なうからです。(7月22日)  
3. 2007年に団塊世代のパイロットが一斉に定年を迎え、約400名の補充を考えなくてはならない状態となった。パイロットは従来航空大学卒と自社養成で充足してきたが、一度に大量の補充は難かしく、全日空は東海大学と提携して、パイロット養成課程を開設するという。(7月24日)  
4. クルマの本田が、エンジンをGEと合弁で開発し、7〜8人乗りの小型ジェット機の製作に乗出すという。性能は時速950キロ、高度1万メートルというから並のジェット機と変らない。テロの関係で搭乗手続や検査で長時間待たされることを考えると時機に適した機種の選択といえるかも知れない。(7月26日)  
5. オリンピックや万博などのイベントの開催で、新しい空港を必要とすることは理解できる。中部国際空港の新設が良い例で、海外28都市、国内25都市と結び、年間予想利用客は国際線500万人、国内線700万人を見込み、7月末現在で月平均100万人と予想通りのペースである。私は6月18日に同窓会をかねて、万博と新空港の見学を試みたが、いずれも多数の人で万博は見学不可能、空港は土曜日で空港管理者に会えず、見物人を見てきた様な結果に終った。要は万博後の人集めをどうするか。地元では知多半島の常滑市、半田市、東海市が一体となって産業観光施設によって人を集めるという。勿論トヨタの経済力、自動車生産工場の見学誘致など強力な方策あってのことである。(7月28日)  
6. 中東の戦争で石油の高騰により、アメリカの一流航空会社のサービスも落ちたようだ映画のヘッドホンを借りるのに2ドルを要求され、食事も有料とか。快適な空の旅も昔の話らしい。(8月15日)  
7. 戦後の民間航空界で活躍したYS-11がいよいよ姿を消すらしい。速度444キロ、乗客64名、162機製作され、76機輸出、昭和39年の東京オリンピックでは、ギリシャから聖火が運ばれた.飯塚機長、会社(全日空)は、YSをオリンピアと型式命名し、時刻表に乗せた。飯塚さんもしばらく羽田航空少年団の理事として、パラセールの指導をされた。海上保安庁と、自衛隊はしばらくYSの使用をつづけるという。(8月28日)  
8. アメリカのデルタ航空とNW航空が破産法の適用を申請した。これで7 大航空会社の4社が、格安航空会社の攻勢と、ハリケーン、カトリーナによる原油高騰により倒産の危機に瀕することになった。ただ、このことにより、日米間航空輸送に影響はないと云われている。(9月15日)  
9. 成田では、世界一高いと云われた着陸料を、騒音軽減推進をも含めて、平均約20%、10月から引下げることに決めた。例えば、B747-400型ジャンポ機の場合、95万円を73万円(約23%)に引下げる。(9月17日)  
10. 米ジェットブルー社の国内線A320は、9月22日、146名を乗せてバーバンクからニューヨークに向かったが、離陸直後前輪タイヤが真横を向いたまま収納できず、ロスに緊急着陸した。同機は約3時間ロス空港上空を旋回して燃料を消費し、機体を軽くして主車輪で滑走路一杯を使用して前輪をつけたが、煙と炎を出しただけで無事着陸し、乗員、乗客に異状はなかった。評論家によると、大変珍しい事故で、状況はテレビで生放送され、乗客もこれを見ていたが、機長のすばらしい技量に感嘆したという。(9月23日)  
11. 台風とハリケーン。台風は北西太平洋で発生する10分平均の最大風速は17メートル以上。ハリケーはカリブ海やメキシコ湾で発生する1分平均の最大風速33メートル以上のいずれも熱帯低気圧。地球温暖化が進むにつれて、強い台風が発生しやすい条件になっているようで、航空機の運航にも大いに影響がある。(10月9日)  
12. 来年2月に神戸空港が開港し、大阪(伊丹)と関西と並んで3空港となる。伊丹は昨年度約2千万の利用客があり、過去最高となり、これは空港と都心間のアクセスの良さを物語っている。関西は国際線は勿論だが、貨物の輸出入に力を入れ、4年後に滑走路2本となる。果して神戸は羽田、千歳、鹿児島等、長距離路線に重点を置くとしているが、どんな結果が出るだろうか。(10月15日)  
13. 原油高でどの航空会社も運賃問題で苦しんでいるが、日航は貨物機の塗装を省き、重量を150キログラム下げた。これで東京−札幌往復分の燃料が一年で浮く。全日空は機内食の皿の目方を1枚あたり170グラムおとし、約300枚程で50キロ減じた。しかしサービスは従来どおりと、各社一生懸命だ。(10月31日)  

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第35号 平成17年6月1日発行

「民間航空界の動き」

顧問 久保俊郎

 

昨年10月末までニュースとしてお知らせしていましたが、続きを表題でお知らせします。
1. 成田の夜間閉鎖後、羽田からチャーター便でソウルヘ向け全日空が土曜の深夜発、月曜の早朝羽田着を募集したところ、九割は若い女性で11月まで完売という。目的は「冬のソナタ」以来の韓流ブームに乗った観劇の由。JALも11月末から1月中旬まで羽田−サイバンの深夜チャーター便を計画する。(10月29日)  
2. 国際線の機内で、自分のパソコンからインターネットに接続するサービス、全日空は成田−上海線で11月15日から、日航はロンドン線で12月9日からはじめる。パソコンから無線LAN(機内情報通信網)経由でインターネットと接続し、ホームページを閲覧したり電子メールを読み書きしたりできる。(10月31日)  
3. 伊丹空港を、関空の2期工事費ねん出のため、2種空港に格下げする。これによって伊丹は環境対策費の3割を国に納め、これを関空の2本目滑走路建設費に回す。(くわしくはスカイフレンドを参照されたい)(11月2日)  
4. 成田のB滑走路は2180メートルで02年から運用していたが、世界一の貨物取扱量(約200万トン)が96年に香港に抜かれた。これを挽回するためにはB滑走路を北側に延ばすほか手はない。最終決断は来年早々になる。(11月8日)  
5. 羽田第2ターミナルが完成し、全日空が主として使用することになった。現第1ターミナルは当初4千万人を処理できるとしていたが、昨年6千万人を取り扱ったのは、航空会社の努力にも依ると云われている。(12月1日)  
6. 関西国際空港が1994年開港以来、 10年目にしてはじめて39億円の黒字を出し5年後第2滑走路の増設に目途が立った。(12月1日)  
7. 団塊世代のパイロットが定年退職期をむかえ、全日空系会社をはじめ、パイロットの資格検査を、従来の大卒生から、応募資格を高卒以上に緩和すると発表した。(12月4日)  
8. 警察庁は、ハイジャック対策のため、武器を持った私服警察官が旅客機に搭乗する「スカイマーシャル」制度を導入することを決めた。(12月11日)  
9. 沖縄本島と周辺の空域で米空軍が行っている航空管制業務「カデナラプコン」が07年度をめどに全面日本に返還されることになった。米軍機とのエアミスが多かったが安全性が高まると期待される。(12月11日)  
10. 海上保安庁に女性の1等航空整備士が生まれた。高校から海上保安学校に入り、平成11年春那覇基地に配属され、6年間でこの資格をとったが合格率は1割の難関だった。(12月26日)  
11. 航空貨物の輸出量が過去最高の130万トンに達する。今年は北米、中南米、欧州、アジアの全方面で好調。中国、韓国、台湾には電子部品、半導体製造装置が夏場までに急増した。ちなみに成田で扱う輸出入品総量は年間200万トンである。(12月22日)  
12. 日航も全日空に続き中型機B7E7型機(200〜300席)30機を発注し、08年度から導入される。07年度中に完成する神戸空港で、一応日本における空港建設はほぼ完了するが、中型機で発着回数を増やせば、旅客にとっては好都合である(12月23日)  
13. 世界最大旅客機エアバスA380公開、総2階建、853席利用可能。一機2億8千万ユーロ、現在149機を受注しているが、採算上は250機の販売が必要という。(1月19日)  
14. 東京−大阪便などが一度伊豆大島上空を通って目的地に向かうジグザグ航空路を、直線で結び直し、経路の無駄を省く方式は前回に述べたが、飛行可能な航路方式として高度差を半分にする案が出された。これは一定の空域、2万9千フィト以上4万1千フィト以下では高度差を現行の2千フィトから1千フィトにし、飛行可能な数を2倍にするというものである。羽田⇔福岡⇔千歳など1日40便以上就航している路線では、空域制限を緩めないと増枠分を活用できないことから、空域管理を2〜3年で見直す方針という。(2月1日)  
15. 2月17日いよいよ中部空港がオープンした。この一週間毎日訪れる客が10万人平均だという。詳細については稿をあらためるが、要するに、日本のほぼ中央に位置し、中部工業地帯の中にあり、愛知万博をひかえ、昼間は客の輸送、夜間は貨物輸送に適している。着陸料、保安施設の使用料を、成田の3分の2まで下げたが、韓国仁川の2倍である。国際線、国内線の乗り継ぎを簡易にし、税関通過時間を短縮した。成田、関西と合わせて3国際空港でもってアジアのハブ空港たり得ると期待しているが今後の需要予測にてらし、複数滑走路を必要とするであろう。(2月24日)  
16. H2Aロケットが打ち上げられた。気象衛星とともに、太平洋上の航空管制システムが改善され、これまで地上との無線のやりとり把握していた飛行位置を、より高い精度つまり航空機同士の間隔を大幅に縮めることができる。(2月27日)  
17. ひとりで無着陸、途中無給油で世界一周(3万7千キロ)飛行がなされた。米冒険家60才のフォセット氏は現地時間3月1日15時にカンザス州サライナを出発、時速630キロで東に針路をとり、東京、ホノルル、ロス上空を飛行。操縦したのは全長13メートルの双胴ジェット機グローバルフライヤーで、重量の8割に当たる8100キロの燃料で、ジェット気流に乗るため高度1万4000メートルで3日目67時間で無事着陸した。(3月5日)  
18. 航空貨物の取扱いで日本一を誇っていた成田空港は、2月に中部国際空港が開港し、拡張後の羽田空港には深夜国際貨物便が就航する見通しで、成田の優位に異変が生じようとしている。(3月19日)  
19. 静岡県に平成20年を目ざして空港を造るという。発想から20年を経ているといぅ。中部国際空港に刺激されたわけではないが、当面観光より工業(ヤマハ発動期とスズキ)の国際化に力を入れる。路線は札幌、福岡、鹿児島、那覇を中心に小型機による小松、松山、成田、関空を予定し、国際的には中国、アジア地区との工業を中心とした交流を目指す。お茶とミカンで知られる気候温暖地にも空港建設の意欲がうかがえる。(3月21日)  
20. 独国ルフトハンザ航空が、スイス航空を買収し、2年後に完全子会社になるという。 これは単に外国の航空会社間の問題のみならず、スイスは現在、チューリッヒ〜東京線を日本航空と共同運航している。一方、ルフトハンザは全日空も加盟する「スターアライアンス」のメンバ丁である.スイスのルフトハンザ傘下入りで、今後、日本航空との協力関係も見直される可能性が大きい。(3月23日)  
21. イベントによって空港や道路ができることは今までもしばしば見られたが、今回の中部国際空港は、関西国際空港を反面教師として、芸術性や開放的な空間を廃し、飛行機に乗らなくても楽しめる、温浴施設や郷土料理店を充実させている。開港後一ケ月で、椅子が足りない、時計が少ないの意見に、対応を急いでいる。この件については、私見だが、6月に実際にこの空港を見てあらためて書いてみたいと思う。(3月28日)  
22. 成田に第3滑走路新設の構想がある。B滑走路の延長が思うように進まないため、海外からの乗入れ要請に答えるべく、現A滑走路に平行して外側に建設の予定で、その間隔が300メートルしかなく、現在の年間20万回の発着を、5、6万回は増やせるという。(3月29日)  
23. 下地島空港はもともと民間機の訓練用空港として79年(昭和54年)に発足したものだが、訓練機が少ないのと、那覇との定期便が運休になり、自衛隊とか米軍の使用で地元がもめている。3000メートルの滑走路を有し、成田や関空のことを考えると、まことにもったいない話である。(4月9日)  
24. 成田B滑走路の延長問題は、南側の地権者の同意が得られそうになく、国及び会社は北側への延伸を決定する模様となった。(4月16日)  
25. この数日間の中国における反日デモによって、ゴールデンウィークをひかえた日本から中国への主として観光客が目的地の中国各都市への旅行をキャンセルして、台湾など他の東南アジアヘ変更しているという。中国の反日デモは稚拙なものだと私は思う。(4月20日)  
26. 最近の日本航空による国内外における機体の損傷や運航上のトラブルで、メディアを賑わせているが、ある新聞は「大惨事の二の舞を避けよ」と警告している。私はこれらの事件、事故は会社の統合や、民営化の不成熟によるものと思う。嘗ての松尾社長のように、営業も大切だが、運航、整備に対し、会社の幹部が細部にわたって連日身をもって点検する覚悟が必要だと思う。(4月21日)  
27. 4月25日朝、尼崎で起った鉄道事故は、当地が交通の激戦地で、中距離ではバスに追われ、長距離では航空機と競合関係にある。「スピードのJR、サービスの私鉄」といわれたが、運輸交通の最大のサービスは「安全」であることを改めて知らしめた。(4月28日)  
28. 女性航空協会発行の機関誌に、最近「安全運航への取組み」と題してベテラン機長経験者2名の、ヒューマンファクターの研究対談が載った.初期には人間中心で、肌で感じ、日で感じ、計器を読みとり適切な反応ができたが、最近、機械やコンピューターが代行して事故の原因が、殆どヒューマンファクター、つまり機長など乗員のエラーによるものとされている。この対策として人との間のコミュニケーション、つまり機長と副操縦士間の対話が重要視されるが、その組合わせが、フライト毎に異なり、難しい問題が残っている。この対話を読んでいる最中に、羽田で、工事中の滑走路に2機が着陸し勤務中の18人の管制官のミスによるものと発表された。私見だが、工事の情報は1ケ月前に、航空情報として周知されているはずであり、工事前のことで事故が起らなかったことは幸いであつた。(4月30日)  
29. かねて石原知事が提唱していた横田基地の軍民共用が、日米合意で6月にも管制権は自衛隊に移管され、民間機が1日15便ほどチャーター便で運航されるという。(5月1日)  

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第34号 平成16年12月1日発行

「最近の航空ニュースから」

顧問 久保俊郎

 

1. 神戸空港は2005年度中の開港を目指し、6月現在工事進捗率75%である。羽田、札幌、福岡など11都市への定期便のほか、ビジネスジェットの拠点をも目指している。 ビジネスジェットは貸切りで、目的地や発着時間を自由に選べる会員制のものを予定している。 旅客数は当初319万人、2010年には403万人を予定している(6月24日)  
2. 輸島塗で有名な輪島市の能登空港は、7月7日で開港1周年を迎えた。羽田間1日2往復だが、搭乗率79.5%で、意外に健闘している。搭乗率保証制度をとったが、これは独自の制度で、当初1日1便を予定したANKに対し、石川県が2便を求めた。年間搭乗率が70%を下回れば、損失分を地元基金がANKに支出、逆に上回れば1%につき1千万円をANKが基金に支払う。懸念された冬場の落ち込みも少なかったことから、ANKはB-737の126人乗りを170人乗りに大型化し、地元のリスクを少なくした。しかし、2年目のジンクスはどうか? 見まもりたい。(7月7日)  
3. 伊丹空港の騒音軽減対策として、ジェット機発着枠の2割に当る1日50便を今後2年間で削減するという。伊丹のジェット機の枠は1日250便で、この50便を関西空港の2本目の滑走路完成を目途に移管するとしたものである。 ジェットエンジンを3、4基搭載しているB-747クラス、DC-10の就航禁止、削減分をプロペラ機枠に戻すという。これは東京−伊丹便が現在年1900万人が利用する日本で3番目に多い路線であるから問題は大きい。 もともと関空が出来れば、伊丹は廃止するということであったものが、地元の要望で伊丹は国内線専用として残ったものである。 来年2月には中部国際空港、その後神戸空港の開港もあり、利用者や航空会社の要請にうまく答えなければ、関西そのものから航空需要が流出する恐れもある。(8月4日)  
4. 中部空港が来年2月にオープンすることは前号にも述べたが、空港の規模は3500メートルの滑走路1本で、国内、国際戦を扱い、予測は2007年1250万人、2012年に1530万人を扱うとしている。勿論愛知万博をも見込んでいる。一番の利点は、成田、関空と違って国際客、国内客の乗り継ぎが同空港でできることである。更に観光客の増加を見込んでいるが、これはありきたりの見物観光ではなく、産業観光というか、トヨタ工場の見学を企画し、団体のリピーター(再来客)をもねらっているというユニークなものである。(8月5日)  
5. 羽田空港の第4滑走路の建設については埋立て工法、又はメガフロート工法でいろいろ検討されたが、結局埋立てに落着し、2009年使用開始を目指すことになった。 メガフロートとは、鉄製の箱をいくつかつなげて海上に浮かべた大型の浮体式構造物である。埋立てに比べて工期が短く、初期工事費用が安いとされる。地盤沈下がない利点があるが、安全面で実績がないのがこんどの結論である。 なお、第4滑走路の完成で、2002年の6000万人乗降客が、2012年に7320万人になると見込んでいる。(8月21日)  
6. 同じ羽田の問題だが、発着枠の再配分を来年4月から実施するという。内容は、JALから22往復、ANAから18往復、計40往復を回収、うち20往復を新規会社である、スカイマーク、スカイネットアジア、エアドウ3社に配分する。残りの20往復は、全国ネットワーク形成への貢献度をもとに、日本航空に11往復、全日空に9往復を再配分するものである。今回の回収再配分で日航が171便、全日空が149便となる。国内線利用客の約6割を占める羽田の発着枠は、売上高に換算して、1便当り年間20億円分の価値とされるので、大手会社にとっては大きな減収要因となる。ただ、利用する我々にとっては、この措置が便利なものになるか否かが問題である。(9月7日)  
7. 大手会社が大型機で幹線を独占するかたちで運航する方式は、前記6でも述べたが、新規子会社にも機会を与えて発展させるのがよろしい。そこで日航と全日空が各々子会社に、小型機でローカル線の運航をはじめた。JEX(ジャル・エクスプレス)は、伊丹を中心として使用機B737-400(156人乗り)で松山、仙台線など6路線、またANKはエア・ネクストを設立、福岡を中心にB737-500(126人乗り)で九州、沖縄線を運航するという。乗客の利便に大いに役立つものと期待される。(9月9日)  
8. 前記7に関連して、空港の整備が発展するにつれて、中小型機の開発が進んできた。 ボーイング7E7級(230〜 310席)の共同開発、製造計画では、日本の企業が機体部分の35パーセント、エンジンの15パーセントを次の3社が受け持つという。即ち、三菱重工業が主翼部分を、川崎重工業が胴体前部、更に富士重工業が中央翼を担当する。 さらに三菱重工業は、YS-11以来約40年ぶりの国産民間機「MT」ジェット機(30〜 50席)の開発を進行中で、地方空港、特に離島線が充実し、国内の航空利用は一段と便利になることであろう。(10月7日)  
9. 中部国際空港の開発は今大変な脚光を浴びているが、全日本空輸とルフトハンザ・ドイツ航空は、開港と同時に日本国内の七都市を結ぶ路線を対象に、同じ機材に複数の便名をつけて運航を始める調整に入つたという。 中部国際空港と札幌、福岡、仙台、新潟を結ぶ路線が候補に上がっている。ルフトハンザのフランクフルト線との乗り継ぎ時間に配慮して利便性を高めるほか、ルフトハンザは海外の旅行会社を通じて日本の国内線の座席を自社便として販売できる。 また、日本航空も中部空港−パリ線を開設する計画だという。(10月8日)  
10. イラク戦争の解決の遅れから、国内各社は近く運賃を5パーセント値上げするという。 勿論石油価格の上昇が原因である。イラク戦争の大義である大量破壊兵器の発見は出来ないと米国は宣言したが、11月の大統領選挙の結果次第で、こう言った問題が解決すると良いと思うのは、グローバルに見て誰しも思うことであろう。(10月13日)  
11. 10月23日夕方6時前後に発生した新潟、中越地震は、翌24、25日にも余震が続き計8万2千人の避難者が出た。これが直下型地震の恐ろしさで、先ず上越新幹線で新幹線としては、はじめての脱線事故があった。勿論高速・一般道もズタズタの状態で地上輸送はゼロの状態であり、新潟−東京間の航空輸送が浮かび上がった。当初日航が2往復、全日空が3往復を実施したが、いずれも満席で、全日空は中型機を一部ジャンポ機に変更し、両社は当分の間この輸送を続けるという。 一度は新幹線の発足で航空路線は撤退したが、この様な地上災害時に、空港さえ使用できれば輸送可能なことが確認された。勿論、自衛隊、消防当局のヘリコプターが近距離避難輸送に活躍したことは云うまでもない。(10月26日)  

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第33号 平成16年6月1日発行

「最近の航空界のニュース」

顧問 久保俊郎

 

1. つい最近のニュースでは、成田における貨物の取扱量が200万トンを越え、輸出96万4千トン、輸入112万4トン、計208万8千トンといいます。これは恐らく世界の空港で一番の取扱い量と思われます。つい数年前までは100万トンの取扱い量と聞いていたのですが、問題はその中身が知りたいのです。従来航空貨物は軽量で高価なもの、例えば精密機械、その部品、最近ではコンピューター、IT関係のものと思われ勝ちですが、生鮮食料品が、魚介類、野菜を問わず入つて来ていることは皆さん毎日の食事でご存じの通りです。貨物量は航空では重量トンで3パーセント、価格は全体の18パーセントを越えると聞いたのは数年前のことですから、今ではかなりその比率は変っていることでしょう。  
2. 我が国に出入りする航空利用客(主に観光客)は、数年前1千万人を目標にしておりましたが、昨年は1千6百万人超えたそうです。ただ、この人数も前述の貨物と反対に入国は少なく、出国者は全体の70パーセントを占めるといいます。出国で多数を占めるのは若い女性で、観光とプランド品の買占めが多いそうです。日本も観光地や土産品も多いと思われますが、やはり欧米の歴史ある世界遺産にめぐまれたところには勝てないのでしょうか。  
3. 羽田空港の利用客が6千万人を超えたのは、もう一昨年の暮のことでした。国民の半分が羽田を利用しているということで、私もいろいろ地方空港で働いた経験がありますがやはりアクセス(空港−都心間の交通)が便利なこと、国際線に比べて搭乗手続きが簡単なこと、加えて運航各社が競って運賃低減に力を入れている結果なのでしょう。空港自体も早くから沖合展開作業で騒音被害を付近住民に与えないこと、運航回数に見合った滑走路の増設に力を入れた結果だと思います。 国の主たる中心空港をハブ空港といいますが、中国、韓国あたりが膨大な空港を作りアジアのハプを目指していることを考えると、日本もうかうかしてはおれません。  
4. 中部空港(名古屋)があと1年で完成し、着陸料をジャンボ機で69万5千円に設定しようと試みております。国際線のジャンボ機の着陸料は、我が国では100万円としておりますが、これが諸外国に比べて一番高価だといわれております。ちなみに、韓国ソウル空港(仁川)は28万円といいます。着陸料は機体の重量によって異なりますが、1機300トンに及ぶジャンポ機の着陸時の衝撃は大変なもので、滑走路の損傷部の修理、補修も大変なことと思います。しかし他国と比べてあまりに差があると日本の空港利用の将来性からも考えなくてはなりません。成田、関西など国際空港も顧客が逃げないよう努力し、例えば着陸料に季節、時間帯別の設置などの対抗策を検討しているそうです。  
5. 4月1日から新東京国際空港公団が、「成田国際空港株式会社」として民営化されました。従来は公団として、空港の基本施設(滑走路、誘導路、エプロン等)を主に管理、運営しておりましたが、会社ともなると収支に重きを置くことになります。先ず、空港の着陸料世界一高額であるのを引き下げ、多くの航空機を呼び込むことです。  
6. この難問を解決するには、先ず非航空収支を増やすことで、人が集まり楽しめる機能を高めることです。日本各地の名産品販売店や、航空機乗り継ぎ客のためのホテルの整備をすることです。私が九州の二種空港のビルに勤めていた頃、成田の公団職員が、商売のコツを覚えようとよく見学に来ました。先ず建物の安全性は勿論ですが、利便性を考えることを強調しました。空港へのアクセスが大事で、成田−東京間にリニアモーターを走らせ、 10分間位で結ぶことなどです。先ずは役所的感覚を一掃し、民間的サービスを徹底することです。  
7. 話は前後しますが、滑走路Bの延長及び付随する誘導路の正常化を最優先的に整備すること、これなくしてはアジアのハブ空港として他国に対抗はできないでしょう。最も困難な作業でしょうが、どうしても乗り切らねばならないことです。  
8. 次に国内線の問題ですが、従来の航空路を改良して、都市間の航空路を直線化しようとするものです。例えば東京−大阪間は、必らず大島回りであったものを、富士山の南を通過して大阪に向かうことです。帰りも同じです。このため多くの航空保安無線施設の整備作業も大へんでしょうが、出来るだけ早く完了して直行便を実施してほしい。航行距離は短縮され、時間の節約、更に料金も低廉化するでしょう。戦後日本の航空管制業務が始まって50年、まさに画期的な計画であり、一刻も早い完成を心から期待しています。(2004年4月)  

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